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第25話.勉強③

鼻の先に【雪人】という人参をぶら下げられて、誠は走り出すことしかできなくなった。 「分かった。たくさん、色んなことを聞くと思うけど、勉強する。だから、静も約束守ってね」 静は誠が【雪人】のことを出しても勉強はしたくないと言うのではないかと思っていた。 しかし、目の前の誠はやる気十分に目を輝かせている。 『もちろん。じゃあ、勉強は今日から始めよう。僕達の部屋でいいかな』 「参考書とか、問題集とかってどうするんだ?」 静と敦がそんな会話をしているのを見ていた誠は、自分から勉強すると言ったことを後悔し始めていた。 でも、生徒会長と話をしたくてもいつも誰かが周りにいて、話しかけることすらも出来ないのだ。 ただ目を見て話が出来れば、それだけでいい。 きっとそれだけで幸せになれる。 ちょっと勉強すればその幸せが手に入るのなら、やっぱり勉強しようと、誠は決意を新たにした。 『持ってるものがあれば、見せて。無ければ僕のを使えばいいよ』 「僕は一度も問題集とか買ったことないよ」 「一度も?」 敦は誠の言葉に驚く。 本当によくこの学校に受かったものだ。 「だって、どの問題集を見てもちんぷんかんぷんで。暗号が書いてあるとしか思えないから」 誠が言ってることは静も少し前に感じたことだった。 つまり、誠は基礎の基礎から始めた方がいいということになる。 「敦…は…?」 「オレは何冊か持ってるんだけど、どれもしっくりこないんだよなぁ。自分に合うのって見つけられなくてさ」 敦は入試で15位だった。試験問題を思い出すと、基礎は出来ているはず。 「文章…題が……苦…手……?」 「よく分かったな。そうなんだよなぁ。読んでる内に何の事を聞かれてるのか分からなくなることが多くて」 静は取り敢えず頭の中で2人に合った問題集を探す。 誠は文句なく静が勉強を始めた時に使っていた、小学生用の問題集と参考書を。 敦は文章題の読み方を誠と一緒に教えれば大丈夫そうだった。 こうして、3人での勉強の日々が始まったのである。

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