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第31話.小テスト本番
小テストへの準備は完璧だった。
でも予期せぬ事態は起こるものである。
「僕だけ違う場所だね」
まさか不正防止の為に入試の成績順でテストを受ける場所が変わるとは思っていなかった。
入試1位と15位の静と敦は同じ教室だったが、138位の誠は当然違う教室となる。
不安だと顔に書いてあるような誠に静は話しかけ、紙を渡す。
「大丈夫」
『始めの合図があったらまず目を閉じて深呼吸を3回して自分は出来ると心で言う。それから問題用紙を表に返す。解答用紙に自分の名前を丁寧に書いたら、初めて問題を読む。解く順番を決めて数字を振ってから、今まで通り問題を解く』
紙に書いてある事を読むと誠は静を見つめた。
「時間足りなくならない?」
「それが……1番…早い……から…」
「誠が頭良くなった事、全員に見せつけてやろう! な?」
敦がニカッと笑うと、誠も緊張が少し解れたのか笑顔を見せる。
「うん。頑張るね!」
誠が教室に入ると、殆どが知らない人ばかりだった。
自分の名前が貼ってある席に座ると、静の模範解答3枚を眺める。が、落ち着かなくて、それを鞄にしまうと筆記用具がちゃんと揃っているか確認する。
シャープペンシルの替え芯も3本入れた。何かあった時用の鉛筆も2本ある。消しゴムはカバーを外して2個用意した。
『大丈夫』
静の声を思い出して落ち着こうとするが、気ばかりが焦ってくる。
「よーし、筆記用具以外はしまってくれ。小テスト始めるぞー」
いつの間にか来ていた先生がそう言う。
誠は先生を見て、それが鈴成だったため少しだけ緊張が解れた。
問題用紙と解答用紙を後ろに送って、開始の合図を待つ。
「では、始め!」
一斉に紙をめくる音がする中、誠は静の言いつけを守り、目を閉じて3回深呼吸をして、心の中で《僕は出来る!》と叫んだ。
そして解答用紙に自分の名前を書くと、問題用紙を表に返した。
問題を見て驚く。
静が作ってくれた仮想小テストの問題とそっくりなのだ。
問題を見た途端、誠は自分がとても落ち着いていることに気が付いた。
問題全体をサラッと読むと自分で解く順番に番号を振る。
引っ掛け問題にも無難に対処出来たと思う。
問題を全て解き終わって時計を見ると、まだ10分も時間が残っていた。
誠はいつも間違っていた問題を見直す。
静のポイントの文字をそこに書いてみる。
そこで、また自分が間違っていることに気が付いた。
書き直し終わった所で『終了、鉛筆を置いて。後ろから集めてくれ』という鈴成の声がした。
出来た。
嬉しさが充満する。
1日がかりの小テストが終わり、みんながグッタリとしている中、誠は筆記用具をしまうと自分の解答を書いた問題用紙を持って、静と敦の元へと走った。
「こら! 廊下を走るんじゃない!」
という先生の声は聞こえなかったということにして、誠は急ぐ。
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