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第40話.家族

インターホンの音がして、静はビクッとして鈴成を見た。 「多分兄貴だと思う。違かったら追い払うから安心していい」 頭をクシャッと撫でられ、静は小さく頷いた。 鈴成がドアの方に行くのを静は目で追っていた。 ドア横にある受話器を取ると話し始める。 「誰だ? ……兄貴。今開ける」 ドアを開けると1番に入ってきたのは拓海ではなく、明だった。 「静!」 「何? 明さんも来たの?」 穏やかに話す静を見て明も拓海も目を丸くする。 「静、お前、声!」 「うん。出るようになった」 明は静が言い終わる前にぎゅっと抱き締める。 拓海も静に近付くとわしゃわしゃと頭を撫でる。 やっぱり、この3人は“家族”なんだと鈴成は思った。 それと同時に、さっきどうして静は自分に抱き締めて欲しいと言ったのだろうと疑問に思う。 頭のいい静のことだ。例え拓海だけが来たとしても大丈夫かと抱きしめる事は分かっていたはずだ。 「兄貴、俺はあっちの決着つけて来るから。まぁ、退学は免れないと思うがな」 未だに静をぎゅーっと抱き締めて離さない明には声をかけずに、鈴成は部屋を出た。 とりあえず先程の疑問は置いておいて、奴らがいる談話室へと向かった。 談話室には静と誠の部屋に侵入し、静を襲った2人と、寮長の貴也と副寮長の征司、第3寮の担当教諭である山崎先生、生徒会長の雪人、副会長の島、それに誠と敦と潤一がいた。 「すみません、遅くなりました。本島くんの保護者の方がいらしたので、あちらはもう大丈夫です」 「あの、静は……?」 遠慮がちに敦が鈴成に質問をする。 「とりあえずは落ち着いたよ」 その言葉にそこにいる全員が良かったと1つ息を吐いた。 「話はどこまで進んでる?」 「部屋の鍵についてです。2人は開いていたと主張しているのですが」 副会長の島の言葉に耳を疑う。 「本島くんは何度も何度も鍵が掛かっていることを確認したと言っていた。開いていたはずはない。嘘をつけば嘘をつくほどお前達の罪は重くなる。本当の事を言え」 フツフツと怒りが湧いてくる。 自分に権限があるのなら社会的に抹殺したいと思う程だ。 いつも穏やかな鈴成が怒っている所を見るのはそこにいる全員初めてだった。

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