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第43話.敦の悩み
明さんはめちゃくちゃイケメンだって誠から聞いていたけど、マジだったな。
怒ってる時は怖かったけど、あの後
『怖がらせてごめんな』
って微笑まれたら惚れちゃいそうだった!
潤一のこと好きになってなかったらヤバかったかも。
潤一のことを思い出すと、また溜め息が出てしまう。
「敦? 最近溜め息多いけど、どうした?」
お風呂から出てきてオレも大好きなモフモフのパジャマを着た静が布団にちょこんと座って聞いてくる。
「……なぁ、オレってそんなに魅力ないかな?」
保冷剤を巻いたタオルを頬に当てた静と、眠そうな目を擦って必死に起きようとしている誠がオレを見てくる。
「敦は可愛いと思うけど、それじゃダメなの?」
可愛いって静から言われるとなんか恥ずかしい。
誰がどう見たって静の方が可愛いに決まってる。
「あぁ、誠、寝ていいよ」
誠が寝て静の肩に寄りかかると、静は優しく声をかける。
2人はセットだとさらに可愛いよな。
「んん、でも」
誠が重たい瞼を開けようとする。
「明日たくさん話そう」
「そうする」
誠は幸せそうな笑顔を浮かべて横になると、すぐに寝息を立て始める。
「で、敦は何を悩んでるの?」
オレ達も寝る、訳ないよな。
「本当なら、あんな事があった静にする話じゃないって分かってるけど……」
「けど?」
「潤一が、襲ってくれないんだ」
オレにとっては切実な問題だけど静には関係ないし、あんな事件があった直後にこんな話するなんて、やっぱり間違ってるよな。
「長谷くんに襲われたいの?」
「あー、無理矢理とかそういうのじゃなくて、エッチな事がしたい」
顔が熱い。きっと、いや間違いなく真っ赤になってる。
「そのまま言ってみたら?」
「ダメ。潤一からしたいって思ってくれなきゃ意味ないから」
こっちから誘って“そんなつもりはない”なんて言われたらショックでどうにかなりそうだ。
「ごめん、敦。僕はそういうのよく分からない」
俯く静に申し訳なくなる。別に静が悪い訳じゃない。
「あっ! 拓海さんに相談してみたら?」
「拓海先生に?」
確かに明さんと一緒にいる時の2人を取り巻く甘い雰囲気は夫婦みたいだって思った。
「なぁ、静、明さんと拓海先生って」
「付き合ってるよ。明さんからは“今後拓海以外の人と付き合うつもりはない”って言われたし、僕も2人は大切な家族だって思ってる」
「そっか」
2人の事を話す静は本当に幸せそうだ。
なんだか急に静かのことを抱きしめたい衝動にかられる。
「静?」
「ん?」
「抱き締めてみてもいい?」
誠とは結構触れるように色々してたみたいだけど、オレとはまだ何もしてなかった。
一緒にいる時間は長いけど、触ったのは入学式の後の寝ている静に思いっきり払われた時の1回だけだった。
「いいよ」
「嫌だって思ったら投げ飛ばしていいから」
ギュッと抱き締めた。
背は殆ど変わらないのにオレの腕にスッポリとおさまる。
しばらくそのままでいても、静の状態に変化は無かった。
静を解放してからしばらくは照れくさくてしょうがなかった。
「敦、今日はもう寝よっか」
「拓海先生は?」
「今あっちに行ったら、2人がエッチなことしてる所に遭遇するよ? 明日、明さんは仕事があるって言ってたから昼間に相談してみなよ」
静は二世帯住宅の拓海先生達がいる方を見た。
ごめん、静。オレ、あの2人のエッチ見たいかも。
いや、見に行かないよ? だけど興味あるなぁ。
「分かった。そうしてみる」
静も一緒に横になったから、オレもすぐに眠りについた。
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