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第44話.拓海ママの非日常①
朝から溜め息がもれる。
「どうかしたか?」
原因を作った張本人がにこやかに聞いてくる。
「明さんのバカ」
「そんな可愛い顔するな。我慢出来なくなる」
ベッドの中で裸で抱き締められる。
明さんの体温に包まれると幸せな気持ちになる。
昨日の夜は二世帯とはいえ、同じ家に静くんだけじゃなく、河上くんも佐々木くんもいたというのに、明さんはなかなか離してくれなかった。
部屋が防音になってるって分かってるはずなのに、3人に声が聞こえたらって始めのうちは我慢してた声も、最終的には大声上げちゃったし。
「仕事行かなくていいの?」
早起きした理由はそれだ。
昨日の静くんの事件で、仕事を放って駆けつけた明さんは今日はその分仕事をしなくちゃいけなくなってしまったらしい。
「その前に拓海を補給しないと頑張れない」
深く口付けられると舌を絡めてから吸われる。
それだけで脳が痺れた様になる。
明さんの前にも何人か付き合った人はいたけど、一緒にいてこんなに幸せだと思えるのはこの人だけだ。
「全然足りないけど、仕方ない。そろそろ行くよ」
「あ、朝食作ってない」
明さんがスーツを着ている間に、自分も服を着ると部屋を出た。
階段を降りてリビングの扉を開けるといい匂いがしてくる。
「拓海さん、おはよ。朝食作ったから食べる?」
「静くん、おはよう。美味しそうだ。もうすぐ明さんも降りてくると思うから、久しぶりに一緒に食べようか」
目の下にクマが出来ている。きっと眠れなかったのだろう。
昨日あんな事があったのだから仕方がないと思うが、憤りを感じずにはいられない。
「あの2人がまだ寝てるから僕は後にするよ」
「なら、僕も後にしようかな」
「美味そうな匂いだ。静の手料理食べるの久しぶりだな」
スーツのジャケットはソファの背もたれに置くと明さんはいつもの場所に座る。
「明さん、おはよ。いつも通り目玉焼きは半熟にしたから」
静くんが目の前にお皿を置いていく。
お嫁さんにしたいくらい、完璧だ。
サラダに半熟の目玉焼き、カリカリに焼いたベーコン。
カリッと焼かれたトーストにスープ。
前に静くんの手料理を食べさせてもらったけど、本当に美味しくて……。
しばらくこの家にいるのなら教えてもらおう。
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