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第48話.天然記念物?①

目を開けるといつもの部屋じゃなくてビックリした。 そっか、静と敦と一緒に泊まったんだった。 「誠、おはよ」 「静、おはよ! 敦は?」 見回してもいない。 「それより、もうすぐご飯になるよ。誠は卵どうするのが好き?」 「温泉卵が好き! 静が作るの?」 「うん。温泉卵は少し時間がかかるから先に作っておくか。一緒に半熟のゆで卵も作っちゃえ」 楽しそうに料理をしてるけど、静のクマは僕だって気がつくくらいハッキリとついてる。 「眠れなかった?」 「あー、ひどい顔してるだろ? 目の下にはクマが出来てるし、冷やしたけど頬っぺたは青紫色になっちゃうし」 何でもないように言ってるけど、辛くない訳ない。 何か声をかけようと思っても言葉が見つからない。 「みんながいてくれたから、思ったより良い状態だよ。1人だったら耐えられなかったと思う」 「静」 名前を呼ぶことくらいしか出来ない。 何か音楽のようなものが鳴った。 スマホの着信音ではない。 「はい、あ、終わったんですね。誠も起きたのでそっちに行きます。……あ! ゆで卵出来たら行きます。誠を先に行かせますね」 静は電話の受話器を置く。 「電話?」 「ちょっと違うけど、まぁそんなとこ。拓海さんの方に行ってて。卵出来たら僕も行くから。敦は先に行ってるよ」 「分かった」 昨日教わったドアから移動する。どこでもドアみたい。 僕ならピンクに塗っちゃうな。 えっと、1階で良いのかな? 扉の外から中を覗くと敦が気がついて手招きしてくれた。 「おはよ、敦、拓海先生」 「誠、おはよ」 「河上くん、おはよう。寝癖ついてるよ」 クスクスと笑われるけど、その拓海先生がめっちゃキレイ。 敦の隣に座ると、拓海先生が立ち上がる。 「拓海さん? どこか行くの?」 「櫛取ってくるよ。敦くんはここにいていいよ」 あれれ? いつの間にか2人が仲良くなってる! 名前の呼び方まで変わってるし……。 「誠? 何(むく)れてるんだよ」 敦に頬っぺたを突かれて、口に溜めた空気が抜ける。 「だって、いつの間にか敦と拓海先生が仲良くなってるから。僕だって名前で呼んで欲しい!」 「いいよ、誠くん。僕の事も拓海で構わないから」 戻ってきた拓海先生……さんは、ちょっと困ったように笑った。 拓海さんが髪をとかしてくれる。気持ちいい。 「誠くんの髪は柔らかいね」 「天然パーマだよな。本人も天然だけど」 天然? よく分からないけど、いいや。 「うん、寝癖無くなったね」 「遅くなりました。もう少しだけ待ってて下さい」 静が入ってくると、すぐにキッチンに立った。 「静、手伝う事ある?」 「今は無い。あとで呼ぶからそれまで座ってて」 「はぁ〜い」 トーストの焼ける匂い、ジューッという音。 お腹が空いてきて、グーッと鳴る。 「誠、こっちに来て。そこにあるスープを持って行って」 僕の出番だ! こぼさないように慎重に運ぶ。 運び終わった時には机の上は美味しそうなもので埋め尽くされてた。 「あれ? これ」 「誠は温泉卵で敦がゆで卵。トーストに合わないと思ったからスクランブルエッグもおまけで付けておいたから」 出来立てのオムレツが拓海さんの前に置かれる。凄く美味しそう! 「熱いうちにどうぞ。多分リクエスト通りに出来たと思う」 思わずオムレツに集中してしまう。 拓海さんがオムレツに切れ目を入れるとトロトロの卵が溢れてくる。 僕も目の前に置かれた卵を割ってみると、黄身は半熟で白身がトロトロの完璧な温泉卵だった。 「誠、温泉卵にはこれを少しかけると美味しいよ」 渡されたものを少しかけてツルッと食べた。 美味しい‼︎ 本当は生野菜は苦手なんだけど、食べてみたらこれまた美味しくてビックリ。 ドレッシングが美味しいのかな? 静も自分の分を持ってくると僕の前に座った。 ちゃんと食べるのを見てホッとする。 食べないと元気出ないもんね! 大勢で食べるのもいいけど、こうやって仲の良い人達だけで食べるのもいいな。 食べ終わる頃にオレンジジュースが置かれる。 至れり尽くせりだ! 使い方間違えてないよね。

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