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第49話.天然記念物?②
「ごちそうさまでした。静、すごく美味しかった」
「本当に美味しかったよ、静くん」
「やっぱり静と誠の部屋が直るまでオレもここにいようかな」
「長谷くんと一緒にいられなくていいの?」
「…………やだ……」
好きな人ってそんなに一緒にいたいものなのかな?
「ねぇ敦、好きな人ってそんなに一緒にいたいもの?」
疑問に思ったら質問をする。
勉強の鉄則。
「誠に1度ちゃんと聞きたいことがあったんだ」
「何?」
久しぶりの敦の真顔に背筋を伸ばす。
「本当に生徒会長のこと好きなの?」
「好きだよ」
当たり前のことを聞いてくるから即答する。
「それって、戦隊物のヒーローを好きっていうのと同じか?」
言われて考えてみる。
「んー。同じだねー」
「やっぱり」
何がやっぱり?
「誠、それは恋じゃないよ」
「え? だってちゃんと好きだよ?」
「静とかオレとかをっていうのと違いは?」
違い?
「そんなの無いよ? 好きって種類があるの?」
訳が分からない。
“好き”は“好き”であって、それ以外は分からない。
敦はこれ以上なんて言っていいのか分からないのか、助けを求めるように拓海さんを見る。
「誠くん、佐山くんのこと考えるとどう思う?」
「え? 会いたいなぁとか、名前呼んで欲しいとか?」
「勉強してる時に急に佐山くんのことで頭がいっぱいになった事は?」
勉強してる時は勉強以外の入る余地はない。
首を横に振る。
「無い。勉強の時はそれだけ」
「する事がない時にどの位佐山くんのこと考えてる?」
「ほとんど考えてないかな。今日のご飯何かなぁとかそういうこと考えてる」
あれ? そういえば、敦がまだ長谷くんと付き合う前は勉強中でもよく“頭冷やしてくる”って何処かに行く事があったけど、それが?
「敦が勉強中によく外に出てたのって?」
「うん、潤一のことで頭いっぱいになっちゃうから勉強に集中出来なくて」
「恋をするとね、その人を中心に世界が回り始めるんだ。もちろん会いたいとか、名前を呼んで欲しいっていうのもある」
小さく頷く。
「でも、それ以上に触りたいとか、抱き締めて欲しいとか、そういう想いが出てくるんだ」
何それ、そんなの知らない。
いや、待てよ。
ある人の事が急に頭の中に浮かぶ。
静の事件ですっかり忘れてたけど、昨日相談しようと思ってたんだった!
「あのさ、僕、昨日告白された」
一瞬シーンとしてからガチャンとキッチンから音がする。
「静くん?!」
「大丈夫。お皿は割れてません。もう片付け終わるので僕もそっちに行きますね」
敦が何か言いたげにこっちを見てくる。
静が座った瞬間に敦が口を開いた。
「誠、どういう事か詳しく話して」
「んー、昨日の朝……」
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