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第56話.恋、なのかな?

鈴成が拓海に連れられて書斎に入ると、未だに顔を真っ赤にしている静はその場に座り込んでしまった。 「静、大丈夫?」 静はさっきまで繋いでいた手を見つめる。 自分に何が起こっているのかが分からない。 「静?」 ようやく呼ばれていることに気がつくと、心配そうな顔をしている誠と敦に顔を向ける。 「これ、飲む?」 誠にさっきのジュースを渡されると、静はそれをいっきに飲み干すと、立ち上がって空になったコップをシンクに持って行った。 ダイニングテーブルのさっきまでいた所に座ると静は1つ息を吐いた。 「なんで鈴先生と手を繋いでたの?」 もう一度敦は聞いてみる。 「なんか、急に繋がれて……よく分からない」 静はまた手を見つめる。 「笑ったの?」 誠に聞かれるが、静にその自覚は無かった。 「分からない。鈴先生にそう言われたけど、そんな記憶無いし」 自分の事のはずなのに、分からないことだらけだった。 「静は鈴先生のことどう思ってるの?」 「え? どう?」 質問の意図が分からない。 「好きなのかなって思って」 「そ、そんな訳ない。それに僕がなんて迷惑だよ」 静は俯くとエプロンの端をぎゅっと握る。 誠に拓海が言っていたことを静は思い出していた。 『恋をすると会いたいとか名前を呼んで欲しいとかもあるけど、それ以上に触りたいとか、抱き締めて欲しいとか、そういう想いが出てくる』 『静と呼んで、抱き締めて下さい』 昨日鈴成に言った言葉を重ねてみる。 その他にも『本島くん』ではなく『静』と呼ばれたいとか、さっきも体当たりした後そのままぎゅってして欲しくなったとか、笑顔を独り占めして嬉しくなるとか。 自分は鈴成に“恋”をしているのだろうか? 1人で考えても答えは出ないが、静は全てをさらけ出して相談も出来なかった。 書斎のドアが開く音がして、そちらを見るとまた静と鈴成は目が合う。 静はすぐに視線を外すと俯いた。

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