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第62話.笑顔再び
6人で食卓を囲み、静の手料理を食べ始める。
「美味しい」
どれを食べても箸が止まらなくなることなど、鈴成には初めての経験だった。
「静、本当に美味いよ!」
「良かった」
大人組はお酒を飲んでいるので、おつまみを残った材料で作って持って行く。
「これ、お酒に合うと思う。味が薄かったら少しだけ醤油を垂らすといいかな」
3人の前に小鉢を置くと、お酒を飲めない自分達の味噌汁と自分の分のご飯をよそうと静も席についた。
自分が作った料理でみんなが笑顔になってくれる。
それを素直に嬉しいと静は思っていた。
心がほんわかと温かくなる。
「あっ! 静が!」
誠の言葉に料理に集中していたみんなの視線が一気に静へと集まる。
微笑む静に、言葉もなくみんなも笑顔になる。
そんな中鈴成は、今の本島くんも可愛いけど初めに見せてくれた笑顔の方が何倍も可愛かったなぁ。なんて思い出していた。
食事が終わると、誠と敦はテレビに夢中になっていた。
大人組はようやくお酒が終わり、お米と味噌汁を食べ始める。
大人組用のだし巻き卵を作ると、また3人の前に置く。
片付けをあらかた終わらせると、静はテレビの電源ボタンを押す。
「良いところなのにぃ〜!」
「ここで消すのは無しだろ?」
「勉強しないと中間の後の休みが補講で埋まるけどいいの?」
静の言葉に2人とも押し黙る。
「ほら、行くよ」
「「はい」」
2人は観念したのか立ち上がる。
「食べ終わった食器は水に浸けておいて下さい。後で片付けますから」
「僕がやっておくよ」
「酔ってますよね? 食器割って怪我したら大変なので」
拓海は少し考えてから答えた。
「ごめん、お願いするね」
「はい。鈴先生、今日は色々とありがとうございました。マスクしていれば月曜日から行ってもいいですよね?」
休みたくないという気持ちは分かるが、襲った奴らの処分がまだ決定していないことがネックだった。
「月曜日は休みなさい。目の下のクマがなくなったら来て良いよ」
目の下のクマはグッスリと眠れなければ無くなることはないだろう。
静はそんな日が来るのだろうかと、途方にくれていた。
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