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第64話.演技じゃなければいいのに

✳︎この世界でのLINEはJOINという名前です しばらくして静は我に返ると恥ずかしさで顔を赤くする。 いちいち反応が可愛くて、敦も誠も見ているだけで笑顔になってしまう。 「昨日何があったかは聞かないから安心して」 静はコクンと頷く。 「で、今日だね。スーパーでの鈴先生の恋人発言は嬉しかった?」 敦の言葉に静の顔が急に曇った。 「静?」 「1番始めに『話し合わせて』って言われたんだ。だから全部演技なんだと思う」 今日の鈴成を思い出してみる。敦には全部本気で演技なんて何処にも無かったように見えた。 「言葉も行動も全部」 抱き締められたことも“恋人”だと言われたことも全部。ということだろう。 「そうかなぁ、オレにはそうは見えなかったけど。もしも演技じゃなかったら? 嬉しい?」 演技じゃなければって思っていた。でも、静は素直にそのことを言えなかった。 「分からない」 「ウソ言わない。ちゃんと本当のこと言って?」 目が泳いでいて、静がウソをついていることは火を見るよりも明らかだった。 「……演技じゃなければいいのにって思ってた」 一際小さい声でそう言うと、静は俯いた。 「うん、そうだよな。ということは、恋人になりたいってことか」 「は? 何言ってるの?」 静は顔を上げて敦を見ると目を大きく見開いた。 「だって、あの恋人宣言も演技じゃないといいんだろ? 本当だったらいいなって思った。違う?」 「あれは驚いて何も考えられなかったから」 静は恋人宣言よりも、抱き締められたことの方がドキドキしていた。 もしかしたら恋人宣言があったからこそ、もっとドキドキしたのかもしれないが、それはよく分からなかった。 机に置いてあったスマホが鳴って3人は揃ってビクッとなった。 「静のじゃない?」 「拓海さんかな」 思った通り拓海からのJOINだった。 拓海『鈴も帰ったし僕達も寝るから片付けよろしくね』 いつもなら電話をするか、内線で直接話すのになと思いながらも返信をする。 静『分かりました』 「鈴先生も帰ったらしいから、片付け済ませてくるね」 「帰ったらまた話すから、待ってる」 「……やっぱり? 片付けに少し時間がかかるから先にお風呂入って大丈夫だよ」 2人は声を揃えて『はぁ〜い』と言うと、早速お風呂に向かった。 静は一度脱いだエプロンをもう一度つけると隣へと向かった。 となりのリビングダイニングからはまだ声が聞こえてくる。 明さんと拓海さんがまだいるのかな? と思っていたらいないはずの人の声が聞こえてきた。 「明さん、どうしてそんなこと聞くんですか?」 「それは俺が静の親だからだな」 自分の名前が出てきた、ということは話題は自分なのだろうか。静は2人の会話に入っていけそうも無いと思い、その場で中の様子を伺う。 「もう一度聞くよ。鈴成くん、本当の気持ちを教えて欲しい。静のことどう思ってる?」 え?!

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