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第78話.本当に好きな人って何?
「へ?!」
「ダメ、ですか? あ、こんな年下と友達とかないですよね。ごめんなさい」
静の提案に驚き過ぎてハルはなかなか言葉が出てこなかった。
「いやいやいやいや、ちょっと待って。俺がしたこと許せるの?」
静は首を傾げる。
「許すも許さないもないです。嫌われてると思ってたけど、嫌いじゃないって言いましたよね? だったら……」
あなたみたいな人は嫌いだと言われる覚悟を決めていたのに、静の口から友達になんて言われるとは思っていなかった。
「……分かったよ。俺で良ければ、よろしく」
「はい」
静はふにゃあっと笑う。
その可愛さにハルは目を見張る。
「うわっ、可愛い。その笑顔は反則だよ、本島くん」
「静でいいです。で、可愛いって何が?」
「じゃあ、俺もハルでいいよ。それと敬語も無しでいいから。可愛いのは静くんのこと」
「僕は可愛くないですよ? 可愛いのは誠とか敦とかハル先生とかでしょう?」
自分の事を可愛くないと思い込んでいることも、可愛いと思ってしまうハルだった。
「俺はともかく、河上くんと佐々木くんも可愛いと思うけど、1番は静くんだと思うんだけどな」
「ありえません」
スパッと断言されて、この話は先に進まないと思ったハルは話題を変えることにした。
「そういう事にしておくよ。静くんは何か聞きたい事とかある?」
「うーん、さっき言ってた本当に好きな人って何ですか? よく分からなくて」
改めて聞かれるとハルも何て答えるのが正解なのか分からなくなる。
それでも分からないと言う訳にもいかない。
「好きにも種類があるんだ」
「種類?」
「例えば家族と友達では違う好きじゃない?」
明さんや拓海さんと、敦や誠かな?
静は考えてみると、確かに違うと思った。
「そう、ですね」
「俺の考える本当に好きな人は恋をした相手の好きのことね。俺の場合だけど、考えるだけでドキドキする。一緒にいたいって思うし、いられたら嬉しい。触って欲しいけど、触られたら恥ずかしくなる。それと、他の人を触ってるのを見るのは嫌かな」
最後の言葉に静はハッとする。
「あの、他の人を触ったその手で、えっと……」
「ん? 他の人を触った手で自分を触ること? 嫌だよね。胸の中は嫉妬でいっぱいだし」
「嫉妬?」
「うん。やきもちね。他の人じゃなくて自分だけを見て欲しい、触って欲しいっていう気持ち」
さっき胸の中に広がったどす黒い感情は“嫉妬”だったのかな?
静はまた胸に手を当てた。
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