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第81話.中間試験

ハルが静にしてしまった事は、問題になる事は無かった。 敦も誠も静が帰ってくるとハルと仲良くなっていて驚いたが、静らしいとも思っていた。 中間試験に向けての勉強には、試験前の部活禁止期間に入ると潤一と浩孝も加わっていた。 補講にならなければ、誠と浩孝も一緒に出かけることにしているらしく、浩孝は必死だった。 「本島って凄いのな。授業より何倍も分かりやすい」 「そうかな? あ、ここもう1度計算してみて」 「やべぇ、またやっちまった」 浩孝は頭をガシガシとかくと、問題を解き直す。 静は浩孝のノートの端にサラサラとポイントを書き込んだ。 「え? そういう事なのか」 解き直した浩孝は静を見る。 コクンと頷いて大きな丸を貰うと、子供のように嬉しくなる。 「長谷くん、日本史は得意だけど世界史は苦手?」 「あー、バレたか。どうも訳が分からなくなるんだよな」 静は自分が昔使っていた資料の中から年表を取り出す。 「あった。これだと関連付けられるから」 日本での出来事と世界での出来事が並列されているだけでなく、静の綿密な書き込みがある為、それを見るだけでも分かりやすい。 「これ、コピーしてもいいかな?」 「もちろん。敦と誠もまだ持ってないから、芹沼くんの分も合わせてがいいかな」 「静、古典のここなんだけど……」 試験の直前まで、静は4人の生徒の面倒をみていた。 中間試験の日程は2日間。 範囲も広く、問題も複雑になっていた。 全てが終わると、早く寮に帰ろうと殆どの生徒が教室からいなくなる。 「静、よろしく」 敦は全ての問題用紙を静に渡す。 「ちょっと待ってね」 答え合わせをする静を敦は見つめる。 敦はハルとの事があってから、静が前よりも色っぽくなったというか、綺麗になったと思っていた。 試験前で色々聞けなかった分、今日色々と聞こうと心に決めた敦だった。 「敦、ちょっと惜しかった。全教科中、3問間違いだった」 「自信なかった所が全部だめだったのかなぁ、悔しい!」 誠、潤一、浩孝と答え合わせをすると、どうやら全員補講にはならなそうだった。

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