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第82話.まったり

「ようやく中間試験が終わった! まだまだ勉強は続くけど、この休みはゆっくりでいいよね?」 「明日の結果発表ドキドキする。静は不動の1位だろうけど、僕も敦も間違いあったからなぁ」 「とりあえず、ゆっくりでいいと思うよ」 静は明日の結果発表が終わったら鈴成と一緒に明の家に行く事になっているし、敦は潤一と一線を越える!と意気込み、誠も浩孝とお出かけ予定と、3人共ゆっくりは出来そうもなかった。 それでも張り詰めた空気の中の試験が終わったとなると、緊張も取れて自然と笑顔になるものである。 そんな中静は明日のことを考えるとまた緊張してしまう。 「静? なんか悩み事? 僕も明日のお出かけに何を着て行こうか迷ってるんだ」 「誠は明日芹沼くんと、、お出かけするんだよね。どこに行く予定なの?」 静はデートと言おうとして、それを飲み込んだ。 「そうそう、オレもそれを聞きたかったんだ」 「芹沼くんに全部任せちゃったから、僕は知らないんだよね〜」 誠は考えるように上を見る。 「誠、芹沼はめちゃくちゃモテる。男からも女からもな。たぶん外に出ると女から声をかけられまくると思うけど、とりあえず誠は芹沼の隣に立ってろよ。遠慮して離れたりするな。分かったな?」 「まだ、あの時のこと言ってるの? 静から護身術も習ってるし大丈夫だよー」 敦の言葉に誠は頰を膨らませる。 「あの時のことって何?」 静が敦に質問する。誠は答えてくれなそうだと思ったのだ。 「誠はさ、何か気になることがあるとそこに集中しちゃうから、すぐにはぐれるんだよ。それで1度変な男に連れて行かれそうになった事があって。それ以来オレだけはずっと誠に張り付いてるようにしててさ」 「なるほどね。でも芹沼くんが誠から離れるって事はあり得ないと思うよ?」 どう見たって浩孝は誠にベタ惚れしている。その浩孝が誠から離れて女性と…なんて考えられなかった。 「用心に越した事はないな。誠、一応防犯ブザーを持って行って。その時みたいな事があった時に使って。使わないならそれでいいから」 静は誠に防犯ブザーを渡すとニコッと笑った。 「くまさん? これ、防犯ブザーなの?」 それはくまの形をしていて、ぱっと見では防犯ブザーとは分からなかった。 「うん。見てすぐに防犯ブザーだと分かると使おうとした時に取り上げられることが多いらしいから」 「カバンに付けておけばいいかな?」 「今のうちに付けておいて。忘れそうだから」 「むー。……分かった………」 誠はお気に入りの白いリュックにブルーの防犯ブザーを付ける。 付けておいて良かったと静に感謝することになるとは、この時の3人は思いもしなかった。 「敦もいる?」 「いや、オレは大丈夫。あんなポヤポヤしてないし、潤一が用心棒みたいなもんだし」 「うーん、でも、備えあれば憂いなしっていうし、僕の安心の為に持ってて」 静は半ば無理矢理敦に黄色いネコの形をした防犯ブザーを渡す。 そこまで言われると受け取らない訳にもいかず、敦は渋々受け取ってポケットに入れた。 「後でオレもカバンに付けておくよ」 「忘れずに付けてね」 まるで母親のような静に敦は苦笑した。

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