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第83話.質問責め①
「なあ、静」
「ん? どうかした?」
「ハル先生とのことがあった日、他にも何かあったよね?」
「え?!」
敦の言葉に静は驚いて固まってしまった。
本当は静からも聞きたい事があったのだが、なかなか切り出せずにいた。
「あの日を境に静の雰囲気が変わった気がするんだよね」
「僕もそう思った! なんか綺麗になった」
「誠もそう思うよな! 確かあの日、鈴先生も一緒に帰って来たよね?」
静の視線が揺らぐのを敦は見逃さなかった。
「何があったの?」
「え、いや、その………」
「ゆっくりでいいから、教えて?」
敦の笑顔が言わなきゃダメだと言っているようで、静は覚悟を決める。
「……きって言った………」
「「え? 何?」」
敦と誠の声が重なる。
「好きって言った」
静の言葉に敦と誠が顔を見合わせる。
「静が鈴先生に、だよね?」
静は顔を真っ赤にしてコクンと頷く。
「好きが分からないって言ってたのは?」
「それはまだよく分からないんだけど、あの時は無意識に口から出ちゃったんだ。だから自分でも驚いた」
敦はニヤニヤが止まらなかった。
「で? 鈴先生は何て言ってた?」
嬉しいとか、俺もとかだと思って聞いたのに、静は更に顔を赤くして呟く。
「だ、大好きだよって」
「静、嬉しかった? 凄く幸せそうな顔してる」
誠はニコニコして静を見ていた。
静はまたコクンと頷くと、敦に質問をする。
「敦に聞きたい事があって」
「何?」
「その後、鈴先生の顔が近づいてきて焦点が合わなくなってね」
その段階で何を言われるのか分かっていたが、敦は止めなかった。
「唇にふにゅって柔らかい感触がして、先生にこういう時は目を瞑った方がいいって言われたんだけど……」
黙って聞いていたがいたたまれなくなり、敦は静に真相を話す。
「静! それはキスされたの」
「え?」
「だから、静の唇と鈴先生の唇がくっついたの」
「えええええええええーーーーー!!!!!」
今までにない静の大声に敦も誠も耳がキーンとしていた。
静は両手で口を覆って、もう1度するかと鈴成に聞かれて、訳もわからずもう1度しなくて良かったと思っていた。
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