85 / 489

第84話.質問責め②

「静は鈴先生とキスしたんだ。そうなるとした事がないのは僕だけだね」 誠はなんだか置いてけぼりにあったような気持ちになっていた。 「したって分かってない時点で、回数に入れていいのか僕には分からないけど、こういう事は競い合うものじゃないと思うよ。誠がしたい、して欲しいって思うまで待った方がいいと思うけどな」 静は誠の頭を撫でる。 誠は分かっているのかどうかはあやしいが、コクンと頷いた。 「そもそも今、キスしたい人とかいるのか?」 誠は敦を見てキョトンとする。 「キスしたい人? うーん、いない」 一瞬浩孝の顔が浮かんだ誠だったが、友達とはそういう事はしないはずだからと除外した。 「生徒会長はどうした?」 そういえば最近全く考えることすらないことに誠は気がつく。 「間違いだったんだと思う。あの好きは、本当の好きじゃなかったんだと思う」 静が鈴成に好きだと言ったのは無意識だと聞いて、誠はそれが本当の好きなんだと思ったのだ。 「だったら、そういう人が出来てから考えろよ。相手がいなきゃ出来ないことなんだから」 「そっかぁ、そうだよねー」 誠はまたニコニコ顔に戻る。 「そういえば静は明日、明さんのところに行くんでしょ?」 誠の質問に静はギクリと体を揺らす。 「うん、その予定だけど?」 「何しに行くの?」 「え? そ、それは………」 なんと答えていいのか分からず黙り込むが、静の顔が一瞬で真っ赤に染まるのを見ると、今度は敦が質問をする。 「もしかして、鈴先生も一緒に行くの?」 「え? ……うん、一緒に行こうって言われたから………」 「それって両親への挨拶ってこと?」 敦が興奮気味に静に詰め寄る。 「そう、なのかな?」 「何で疑問形?」 「何を言うつもりなのか、教えてくれなかったから」 全く何も知らなかったら、こんなに顔を真っ赤にするかな? 敦は疑問をそのまま静にぶつける。 「それでも、何かこうじゃないかな? ってことはあるんじゃない?」 「先生、僕との先の事を考えてくれてるみたいで」 どんどんと小さい声になる静が可愛くて敦は頭を撫でる。 「そっかぁ。相手が大人だと展開早いな。ちょっとだけ羨ましいかも」 「え?」 静は自分の気持ちがちゃんと分かる敦が羨ましかった。 それなのに敦は自分のことを羨ましいと言う。 人生はなかなか上手くはいかないものだと2人共思っていた。 「とにかく、明日のことはまた報告し合うって事で、いいよな?」 「待って。敦のことまだ聞いてないよ?」

ともだちにシェアしよう!