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第85話.質問責め③
静の言葉に今度は敦がヤバイという顔をする。
「オレの事はいいよ」
「僕のこと、根掘り葉掘り聞いたのは敦だよね?」
こういう時の静は怖い。
「長谷くんとデートしないの?」
「いや、デートはしないかな」
誠はうーん、と考えて思いついたことをそのまま言った。
「エッチなことするんだ! そうでしょ?」
誠は分かったもんねーと得意気だ。
誠に言い当てられて、敦も顔を真っ赤にする。
「バカ! そんな大きな声で言うなよ……そのつもりだけどさ………」
「怖くない?」
静は怖い経験しかないから敦に苦しそうに聞く。
「ある意味怖いかも。自分が好きだって思ってる人とするのは初めてだから。潤一に嫌われちゃうかもしれないし」
「長谷くんが敦のこと嫌うとか、ないと思うけど?」
静の純粋な言葉に少しだけ救われるような気持ちになる。
「だってさ。潤一は何もかもが初めてなのに、オレはそれを他の誰かと経験済みなんてさ。それが嫌で今まで何もしなかったのかもしれないじゃん?」
この考えに行き着いたのは、拓海に相談した後のことだった。
好きでもない人に抱かれてた自分は汚れてる。
魅力以前の問題だとそう敦は思い始めていた。
「敦って、自分のことになるといつもそうなの?」
「何が?」
「僕には分からないことがあったらちゃんと本人に確かめろって言ったよね?」
確かにそう言った事がある気がする。
「長谷くんにちゃんと聞いたの?」
「そんな事聞けるわけないだろ」
「それなら、そう考えるだけ損だよ。好きだって思ってるし思われてるなら、信じなよ」
静から言われるとは思わなかったから、敦は言葉を失う。
「敦も僕も初恋なんだから、相手のことを信じようよ」
「静……ふふっ、初恋って認めるんだ?」
「また僕は仲間はずれ?」
誠がプ〜ッとまた頬を膨らませる。
「誠の初恋の相手は誰だろうな? もう近くにいたりしてな」
敦は誠の頰をつついて笑顔になる。
「近くに?」
誠は首を傾げると誰だ?と考え始める。
でも誰だか分からず、すぐに考えるのをやめた。
「わかんないからいいや。それより、明日何を着てけばいいかな?」
「あの紺色のポロシャツに白のハーフパンツがいいと思うけど」
「あぁ、あれな! うん。あれ誠によく似合ってるよな」
2人からそう言われると誠はエヘヘと嬉しそうに笑った。
「そうするね!」
誠はクローゼットから服を取り出して用意を始める。
「静、あのチョイスって」
「うん。白のリュックが目立つようにしないと」
「やっぱな」
すぐにはぐれるなら見つけやすいにこしたことはない。
こうして3人の緊張の休日が始まろうとしていた。
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