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第87話.それぞれの休日の始まり

誠は下駄箱で靴を履き替えると、外に出る所で立ち止まる。 浩孝は部活動のことで先輩に呼ばれたとかでそこで待ち合わせることになったのだ。 本当は敦と静が誠抜きで話がしたいということで、そうしてもらったのだが、その事を誠が知ることはなかった。 「芹沼、よく聞けよ。誠ははぐれる天才だ。だから目を離すな、分かったか?」 「何だよ急に。俺が河上くんのことから目を離す訳無いだろ?」 逆に目が離せなくてどうしようと思っている位なのに、と浩孝は思っていた。 「敦、そんな言い方しないの。ごめんね、芹沼くん。誠のことが心配なだけなんだ」 穏やかな静の口調に、浩孝は“いや”と頭をかく。 「僕が安心したいが為に、誠には防犯ブザーを渡したんだ。無いとは思うけど、何かあってどこからか音がしたら助けてあげてね」 「そんな事にならないように気をつけるよ」 「お願いね」 「頼むぞ」 「あ、あぁ」 可愛い2人からのお願いに浩孝はタジタジだ。 「ヒロ、俺からも頼むよ。河上が帰ってきて大変な目に遭ったとかになると、俺の計画は白紙になっちまう」 「ジュン、任せておけ。お前の計画を執行出来るよう、俺も頑張るから」 背の高い2人がコソコソと話すのを敦と静は見上げていた。 元々仲のいい2人だから気に留めることもない。 「誠、待ちくたびれちゃうから、そろそろ行った方がいいよ」 「あぁ、行ってくるな!」 爽やかな笑顔を残し、浩孝は走って行ってしまった。 「僕も、そろそろかな。行ってきます」 「静、後でちゃんと報告な? 行ってらっしゃい!」 静は“もう!”と苦笑すると、歩いて職員室に向かった。 「潤一、俺達も行くよ?」 「え? どこに?」 「誠と芹沼の後を追うの!」 「はあ?!」 走り出してしまった敦を潤一は追いかけるしか無かった。 走って道路に出ると、バス停に向かう2人が見えた敦は同じバスに乗る為に小走りで追いかける。 何とか間に合い、2人に気が付かれないように敦と潤一もそのバスに乗り込んだのだった。

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