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第89話.【誠の休日】これってデートなの?!②
終点の駅に着くとバスから降りて、駅に向かう。
「ヒロくん? ココじゃないの?」
「うん。3駅先の方が色々あるだろ? そっちに行こうと思ってたんだけど、誠がここがいいって言うならそうするよ?」
誠はふわっと笑う。
「あっちはあまり行ったことないから嬉しい!」
電車はバス程混んではいなかった。
それでも長身の浩孝は目立つ。
「ねぇねぇ、あの人カッコイイね!」
「本当だ。あーでも恋人いるみたいってその子も可愛い!」
「やー本当だー!」
結局どこに行っても騒がれる2人だった。
目的の駅で降りると人が多くてはぐれそうになり、咄嗟に浩孝は誠の手を握る。
「ヒロくん?」
「はぐれないように、繋ごう?」
誠はひゃー、ヒロくんのおてておっきいなぁなんて思っていた。
「気になった店があったら言って?」
「うん!」
誠は窓からお店の中を覗きながら歩く。
そして立ち止まったのは
「ゲームセンター?」
誠はクレーンゲームの一台に釘付けになっていた。
浩孝が後ろから覗くと、そこには大きなテディベアがあった。
それは誠にソックリだった。
クリッとした目に色素の薄い茶色がかった髪の毛、ふわっとした天然パーマ。
テディベアは目は大きめで毛並みは色もふわっと感も誠に似ている。
是が非でも景品をゲットして、誠が抱き締めている姿を見たい!
そう浩孝は思い、財布を取り出す。
「小銭がないな」
辺りを見回すとすぐ近くに両替機があった。
「誠、お金両替するから」
聞こえていないのか誠はそこから動こうとしない。
目の届く範囲だしと、浩孝は両替をしに行ってしまう。
お金を取り出すほんの一瞬の間に誠は姿を消してしまった。
「え? 誠? 誠!」
辺りを見回してもいない。
ゲームセンター内を走り回るが見つからない。
「ウソだろ?!」
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