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第91話.【誠の休日】これってデートなの?!④
「誠? 大丈夫か?」
怖いと顔に書いてあるような不安な表情で見つめられる。
「俺も一緒に行っていいですか?」
「もちろんです」
事務所に向かう間に誠は店員に質問をする。
「犯人は3人ですけど、みんな同じ所にいるんですか?」
「え? 3人? 2人じゃなくて?」
どうやら捕まえたのは2人らしい。
誠は振り返ると野次馬の中の1人を見て目をみはった。
「誠、どいつだ?」
「赤い服」
赤い服の男は1人しかいない。
浩孝が走り出す前に、店員が誰かに指示を出す。
「赤い服の男だ。ちゃんと捕まえろよ」
黒ずくめの男が赤い服の男を捕まえるのを見て、なんとなく違和感を感じた浩孝は聞かずにはいられなかった。
「あなた、本当にここの店員ですか?」
「ここの店員なんて言った覚えはないですが?」
誠に危害が及ばない様にと背中に庇う。
「嫌ですねぇ、何もしませんよ。ただ犯人の確認をして頂きたいだけです。あいつらを捕まえて警察に引き渡すのが私の使命なので」
「お兄さん、辛いことがあったの?」
誠の方が辛そうな顔をする。
どうしてこんなに優しいのだろう。
「大切な人があいつらのせいで壊れてしまったんだ。もう1年経つというのにまだ俺の事も分からない」
「それは辛いね。でもどうして傍にいてあげないの?」
誠の言葉にその人はハッと息を飲んだ。
「犯人を捕まえることは誰にでも出来るけど、その人の傍にいて元気づけるのはお兄さんにしか出来ないと思うよ?」
恐らく自分が辛いから一緒にいられないのだろうと浩孝は思った。
「でも、犯人が捕まったならこれからはずっと一緒にいられるね」
ニコッと屈託無く笑う誠を見て、その人は片手で顔を覆う。
泣くのを我慢しているのかと思ったらクククっと笑う声がする。
「静さんのお友達は随分とお人好しなんですね」
「静? もしかして大野家の人?」
「察しはいいですが、あまり声には出さない方が良いですね。犯人の3人はこちらで処理しますのでご心配なく。もうお会いすることも無いかと思いますが、静さんと関わりがある間は監視の目がいつでもあるとお思い下さい。あちらにいるお2人にもそうお伝え下さい。では」
3人は誠に面通しされることもなく、黒ずくめの男達に連れて行かれる。
そして後をつけていた敦と潤一は誠に見つかってしまった。
その後本物の店員に何度も何度も頭を下げられ、景品の中から何でも好きなものを差し上げます。と言われ、誠は迷わずあのテディベアをもらったのだった。
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