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第93話.【誠の休日】これってデートなの?! 終
喫茶店から出ると、敦は浩孝にもう一度注意をする。
「オレ達は用事があるから行くけど、もう絶対に目を離すなよ。わかったか?」
「目を離すなんて勿体無いことはもうしないよ」
デレッとした顔で言われてムカッとしたが、敦は手を出さないようグッと我慢する。
「敦と長谷くんは用事があったんだねー。時間は大丈夫?」
「大丈夫だから気にするな。誠は芹沼から離れないこと、分かった?」
「うん、ヒロくんから離れないようにする!」
はあ? ヒロくん???
今朝まで芹沼くんと呼んでいたのに、随分と仲良くなったもんだ、と敦は感心する。
この感じだと、浩孝は誠の懐に潜り込むことに成功したと言って良いだろう。
「じゃあ、また寮でねー」
大きなテディベアを抱き締めてるから手を振れず、誠はテディベアの手を持って手を振る。
そんな誠に敦と潤一も手を振った。
「あの天然! 本当、可愛いな」
「敦も欲しいのなかった?」
「え? ゲーセンで? ないよ」
「本当は気になったのあったろ?」
何で気付かれてるんだよ!
なんか恥ずかしい。敦は頬を赤く染めて潤一を見つめる。
結局この後、ゲーセンに戻りクレーンゲームに夢中になった2人は、敦が気になった猫のぬいぐるみと、そこに一緒にあったウサギのぬいぐるみをゲットして敦はその猫のぬいぐるみを抱きしめて、潤一はゲーセンにあった景品を入れる袋にウサギのぬいぐるみを入れて持ち、寮に帰った。
帰りの電車内で他から見えない様に壁になった潤一は嬉しそうに猫のぬいぐるみを抱き締める敦に悩殺されていた。
一方、誠と浩孝は雑貨店にいた。
「可愛いものでいっぱいだね!」
誠が1番可愛い! と口から出かかったが必死におさえる。
「そうだな。見難いならテディベア持ってようか?」
「え? うーん、じゃあお願い」
渡されて誠と同じ様に抱き締めると、思ったよりもふわふわしていて気持ちがいい。
でもそれだと今度は浩孝が歩き難いため、肩に担いでおくことにした。
「気に入ったのがあったら言って。怖い思いをさせたお詫びに俺が買うから」
「むー。そういう理由はなんかやだ」
「じゃあ、初デート記念ってことで」
ニッコリと笑う浩孝は眩しくてドキドキしてしまう。
デートって好きな人同士が出かけることじゃなかったっけ?!
誠は頭の中がごちゃごちゃするからいつものように、考えるのをやめた。
店内を見て回り、あるチャームに釘付けになる。
3人が持っている防犯ブザーのように青のクマ、黄色の猫、ピンクのウサギがある。
キラキラしていて可愛い。
「佐々木と本島と3人分か? 買ったら帰ろうか」
誠が持っていたチャームを浩孝はスルッと抜き取るとレジに並んで会計を済ませてしまった。
「はい」
渡されて驚く。
3つは別々に袋に入れてあり、リボンがかけられていた。
「中身と同じ色のリボンにしてもらったから」
誠は大事にリュックにしまうと浩孝にお礼を言う。
「ヒロくん、ありがと!」
「どういたしまして」
また頭を撫でられてドキドキする。
テディベアをまた抱き締めてなんとなく顔を埋める。
学校に帰って来て、浩孝は第1寮の前まで送ってくれた。
「今日は怖い思いさせてごめんな」
誠はそんなことは忘れる程楽しかったので全く気にしていなかった。
「すごく楽しかったよ? ヒロくん、また一緒にお出かけしようね!」
「あぁ、そうだな」
「じゃあ、またね」
誠は先程と同じようにテディベアの手を持って振ると寮の中に入って行った。
「なんだよ、あの可愛さは!」
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