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第114話.【静の休日】天国と地獄⑤
鈴成と拓海が隣に移ってからもう少しで3時間が経とうとしていた。
壁にかかっている時計ももう6時を刺そうとしている。
「なあ兄貴、あの2人の話長くないか?」
「うん。……あ、それより静くんに指輪をプレゼントしたの?」
拓海は幸せオーラ全開の静の様子を思い出す。
「あの短時間で気がつくとか、ほんと兄貴スゲェな。そうだ、これ見てくれよ。可愛いだろ?」
鈴成はさっき1番始めに撮った、指輪を眺めて涙を流しながら微笑む静の写真を見せる。
「静くんがめちゃくちゃ可愛いのは知ってるけど、コレはヤバイね。……鈴、ニヤけ過ぎて気持ち悪いよ。そんな顔静くんが見たら100年の恋も冷めるね」
それは困るとピシッとしようとしても、可愛い静を見ればまたすぐにニヤニヤしてしまう。
鈴成は静に指輪を渡したら自分の想いが溢れて止まらなくなることなど、容易に想像出来ていた。
だから勝手に自分と静の外泊許可書の提出を済ませているし、カバンの中にはコンドームやローションも用意されていた。
指輪と一緒にカバンに入れることは罪悪感でいっぱいになったが、静を抱きたいと思った時から常に用意だけはしていた。
いじっていたスマホが鳴り、そこに静の名前が表示される。
「もしもし」
『簡単ですが夕飯の支度が出来たので、こちらに来てくれますか?』
「わかった」
電話を切ると鈴成は拓海に声をかけた。
「夕飯の支度が出来たって。話だけじゃないから時間かかってたんだな」
「献立は何かなぁ?」
鈴成と拓海が隣のリビングダイニングに着くと、静はまたあのひらひらの真っ白なエプロン姿で料理をしていた。
「座って下さい。今日はオムライスにしました。上に乗っているオムレツを横に切りますね」
3人が座りその前にオムライスが置かれると、静がオムレツを切って開く。
トロットロの卵があらわれてオムライスが完成する。
さっき簡単ですがと言われたが、オムライスもケチャップではなくデミグラスソースがかかっているし、サラダとスープも用意されていた。
4人で夕飯を食べる。
静と明は平静を装うが、拓海に何か気が付かれていないかと気が気では無かった。
味なんか分からない夕飯が終わると、片付けを済ませて静は鈴成の隣に座った。
前には明と拓海が座っている。
“明さんに2人のこと話したいって思ってる”と言っていたのだから、それなんだろう。
鈴成が緊張をほぐすために、息を吐くのを感じた。
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