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第115話.【静の休日】覚悟①

「明さん」 「ん?」 ちょっと不機嫌そうな明を見て、これが演技なら役者になれると静は思っていた。 「静さんが卒業したら結婚を前提にお付き合いしたいのですが、よろしいでしょうか?」 あまりに丁寧な言い方で静を含めて3人全員が笑いそうになるのを堪える。 鈴成は自分の膝に乗せてある手を見つめていてその事には気がついていない。 明は大きな溜め息をつくと、その笑いそうな顔を引っ込めて眉間に皺を寄せる。 「駄目だ!」 鈴成が顔を上げて明を見る。 そうしたら明は少し笑った。 「そう言いたいが、静があんなに嬉しそうにしてるのに反対なんてしないよ」 「明さん」 「静くん、良かったね」 例えほんの少しの時間でも、明と拓海から祝福され、初めて好きになった人と一緒にいられる。それが嬉しくて静は拓海の言葉にコクンと頷く。 「鈴成くん、ちょっといいかな?」 「はい」 静と拓海が指輪を一緒に見ている光景を尻目に、鈴成は明と書斎に入った。 「明さん?」 しばらく沈黙が続いて鈴成から話しかける。 「鈴成くん、静は幸せになる事をずっと怖がってた。多分今も新しい不安と戦ってると思う」 「不安?」 「うん。君が自分から離れて行ってしまうかもってね」 そんなことはあり得ない。 自分が離れたくなくて、約束をしたいと思ったのだ。 「俺は離れたりしません」 こんなまっすぐな目をした鈴成のそばにずっといさせてやりたい。でも、それが出来なくて明は歯がゆかった。 「今日も学校に戻るんだろ?」 「あー、実は俺も静も戻らなくて大丈夫なように外泊許可書の提出はしてきてます」 目が泳いでいて、嘘がつけないんだなと明は思った。 「じゃあ、静の不安を取り除いてやってくれ。あの子が望むなら今日だけは何をしても俺は何も言わないよ」 さっき、静と話し合って鈴成に伝えることにした言葉をスラスラと言った。 静は“あっちに行ったらきっと秀明さんの相手をする事になるから、その前に鈴成さんとシたい”と言っていた。 まだその行為自体を怖いと思っているはずなのに、その眼は覚悟を決めていた。

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