117 / 489

第116話.【静の休日】覚悟②

鈴成と明が書斎に入ったのを確認してから静は拓海に改まって話しかける。 「拓海さん、あのね」 「うん、どうした?」 拓海は静が何か思い詰めてるのは分かっていたが、無理に聞き出そうとはしなかった。 「この指輪をつけてもらった時に、鈴成さんに抱いて欲しいって思ったの。……変かな?」 これは本当の事だった。 その後に自分がターゲットになったことを知って、その想いは更に増していた。 「変じゃないよ。それは自然なことだから。どうなるか分からないけど、準備だけはするかい?」 「準備?」 「元々そこは受け入れる器官ではないからね。色々と準備が必要なんだよ」 静はよく分かっていなかったが、頼れる人は拓海しかいなかった。 「準備、する」 拓海は静の頭を撫でると微笑んだ。 鈴成と明が書斎から出てきて、静はそちらに顔を向ける。 明が小さく頷くのを見て、さっき決めたセリフをちゃんと言ってくれたとホッとする。 「鈴成くん、今日は泊まって行くって」 明の言葉に静と拓海は鈴成を見て、立ち上がる。 鈴成は静の正面に立つと視線を合わせるように少し屈む。 「今日はずっと静のそばにいたい。いい?」 静は何度も頷いてから囁くような声で 「嬉しい」 と言った。 「じゃあ静くん、行こうか」 「……はい」 拓海に着いて行ってしまう静を呼び止めようとして、それを明が止める。 「静にも心の準備があるんだろ? もう少し拓海といさせてやってくれ」 おそらく、体の方の準備をしに行ったのだろうが、明はそんなこと言えなかった。 そんなことを言ったら拓海に叱られて、自分が今日出来なくなってしまう。 さっき航空券の手配は済ませた。 出発の直前にこれからのことを拓海にだけは伝える予定にしているが、その前に知られてしまってはならない。 「鈴成くんはあっちでシャワーでも浴びて静を待っててくれるか?」

ともだちにシェアしよう!