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第123話.大野家の現状

「静ちゃん、連れて来たわよ」 「ありがと、諒平さん」 「終わったらまた教えてね」 「はい」 諒平さんは晴臣さんを連れて来て、すぐにそこから出て行った。 晴臣さんと2人きりになってしばらく沈黙が続く。 「晴臣さん、僕がこれから大野家に行って、どんな目に遭うのか大体で良いんだけど分かるかな?」 「静さん……。その前に今の大野家の現状をお話しします。頭の良いあなたなら秀明様を失脚させられるかもしれない」 晴臣さんは先程とは違って秀明さんに憎悪を抱いているようだった。 「分かった。聞くよ」 「大野家が関わっているのは………」 大野家が関わっているのは会社だけでなく、裏社会もだった。 もちろん、それは暴力団もである。 暴力団に拉致された人達も大野家が面倒を見ていて、そこに静も入ることになる。 その建物は大野家の敷地内にあるが、セキュリティがかなりしっかりとしていて、中から出ることは不可能だ。 中に入るのにもカードキーの他に指紋認証と虹彩認証が必要で、現状で入れるのは秀明と晴臣ともう1人だけだ。 晴臣は看護師の資格も持っているため、体調管理と食事を届ける係だった。 もう1人は調教師で秀明との関係を円滑に持たせる為に色々なことをしている。 そこでサファイアという危険ドラッグが使われていた。 それは名の通りサファイア色したブルーの塊で燃やした煙を吸うことで、その後に言われたことに従うものだった。 その作用で目や耳が不自由になった人もいて、現在では取り締まりの対象になっている。 もう市場からは姿を消していたが、そこでは秘密裏に使用されていた。 晴臣はサファイアがそこにあるという事実が分かれば秀明の失脚に繋がると思っていた。 「残念だけど、その調教師の人に全ての罪をなすりつけて終わりにする算段だと思う。会社への融資とかも秘書が勝手にとか言いそうだし。難しいね。秀明さん本人の体調はどうなの?」 「数週間前に精密検査を受けられた結果、ガンが見つかっておりますが、まだ初期のもので手術で完全切除出来るとのことでした」 ガンはもう身近な病気で、出来た場所によっては完治するものになっている。 大野家の当主の手術となれば、確実に名医と呼ばれる人が執刀するのだろう。 秀明さんを失脚、もしくは当主の座から引きずり下ろすことは出来そうもなかった。 結局、大野家の現状は鉄壁の要塞に囲まれた治外法権だということだ。 「そっか。ごめんね役に立たなくて。でも中に入ってから僕に出来ることがあれば言ってね」 「静さんが謝ることではありません。私こそ静さんをお守りできず申し訳ありません」 晴臣さんは深く頭を下げる。 「何言ってるの。僕は晴臣さんがいてくれてすごく心強いよ? あのさ、サファイアについて詳しく教えてくれないかな?」

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