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第125話.指輪③

晴臣さんが出て行くと入れ替わりで諒平さんが入ってきた。 「なんか私に話?」 「これを風間先生と拓海さんに渡して欲しいんです。詳しくはメッセージカードに書いてあるから」 「自宅にも読むためのライトがあるから、拓海ちゃんを呼べばいいわね。でも拓海ちゃんは知ってるの?」 諒平さんはユニパックを受け取るとすぐに自分のカバンにしまった。 「明さんから今頃聞いていると思う。明さんに対してかなり怒るだろうけど、その後僕の事を考えて泣きそうだな。しかも知らないフリをして欲しいなんて、1番苦しいのは拓海さんかも」 「何言ってるの、1番苦しいのは静ちゃんでしょ! 」 首を横に振る。 何も知らずに姿を消された鈴成さんや敦や誠やハル先生も苦しむかも。 そう思うけど、本当の事を伝えたら助けに来てしまうだろう。 きっとそれは許されないことで、どんな目に遭うか分からない。 ドアをノックする音で自分が考え込んでいたことが分かった。 「諒平さん、ごめんね、考え込んじゃった。心配してくれてありがとう。で、誰かな? どうぞ」 「入るわね、出来たわ。指輪2つ」 アヤメさんはフカフカのトレーに指輪を乗せて入って来た。 机にトレーを置くと手袋をして、1つを持って見せてくれた。 「これは手土産の方ね。オリジナルで私の怨念と呪いを込めて彫ったわ。出来上がりを見ると、まぁ格好よく出来たかしらね」 なんだか複雑な模様だけど、そんな怨念とか呪いなんて関係なく、格好いいものだった。 「格好いいです。きっと気に入ってくれると思います」 「そして、これが頼まれたもの。元は全く分からなくなってるわ。X線で調べられても元の指輪の存在は分からないから。安心して持っていていいわよ」 渡された指輪はどこをどう見ても母さんが持っていた指輪だった。傷もリアルだし、裏もM to Aと彫られている。 すぐにチェーンに通して首から下げた。 「傷のところも丸く加工したから痛くないと思うけど、肌に当たっても大丈夫?」 「大丈夫です。本当にありがとうございました」 深く頭を下げる。 「諒平さん、メッセージカードは半年後にみんなに渡して下さい。SDカードは1年後で」 「分かったわ」 「アヤメさんも1年半以内に会えたら嬉しいです」 「待ってるわ」 別れは辛い。 「2人とも、本当にありがとう! 行ってきます、またね」 「「行ってらっしゃい、またね」」 自分が思うよりも涙はどんどん作られるらしい。 お店の裏口を出ると晴臣さんが待っていた。 「まだ10時前ですが、よろしいのですか?」 涙を拭いて、今度こそもう泣かないと決意する。 「早く着く分には問題ないでしょ? 電車は乗れるから最寄りの駅まで行こうか」 指輪に触るだけで強くなれる気がした。

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