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第128話.カツアゲ? いえ、ナンパです

このままでは10時40分には大野家に着きそうで、電車を降りて駅を出ると晴臣は秀明に電話をかけた。 少し離れたところに立っている静は晴臣を見ていて、近寄ってくる人物に気がつかなかった。 「ねぇ君、1人?」 目の前に立たれて晴臣の姿が見えなくなる。 「違います」 「でも、今は1人でしょ?」 静は投げ飛ばそうかと考えるが、目立ちたくは無いため、晴臣が気がつくのを待つ。 「ほら、俺と遊ぼうよ、ね?」 腕を掴まれそうになり、静はその手を払う。 「嫌です」 「いいから、一緒に来いよ」 明らかに声のトーンが変わる。 面倒な事になりそうで晴臣にくっついていれば良かったと思う。 急に腕を引かれたと思ったら静は晴臣の腕の中にいた。 「人のものに手を出さないで貰おうか」 「っ…! ……晴臣さん………」 今までの雰囲気と全く違う。 恋人に対してはこうなるんだ、と静はクスッと笑う。 「チッ、本当に連れがいたのかよ。何もしてねーし、もういいよ」 声をかけてきた男はそう言うと、どこかに行ってしまった。 「静さん、何ともありませんか?」 「うん、大丈夫。お金持ってるように見えたのかな?」 的外れな静の言葉に晴臣は額に手を置いて溜め息をつく。 「今日の静さんはある種の色気がダダ漏れなんですよ」 「色気って何言ってるの?」 「昨夜何かあったのでしょう?」 鈴成との事を急に思い出して顔を真っ赤にする静は、恋愛感情が全くない晴臣も物凄く可愛いと思う。 そこに気怠げな雰囲気が合わさって男の視線は静に集まっている。 「とりあえず、行きますよ」 自分が注目されている事を全く自覚していない静を、晴臣は早くこの場から遠ざけたかった。 「大野家?」 「秀明様が急遽本日より入院される事になりました。執刀される先生の都合がようやくついたようで」 歩きながら説明をする。 「奥様も付いて行かれるのですが、奥様と静さんを会わせたくないということで、12時過ぎに着くようにとおっしゃっていました」 「そう、それまではどうするの?」 「私がよく行く喫茶店がありまして、そこでしたらどんな話をしても大丈夫なので。12時までそこにいましょう」 連れて行かれた喫茶店は路地裏にあって、普通に歩いていたら見逃してしまいそうな程ひっそりとしていた。

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