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第133話.◇連絡
泣いている鈴成を抱き締めていた拓海もいつの間にかまた泣き始めていた。
いい大人の兄弟が抱き合って泣いている姿は傍 から見ると異様な光景だったが、2人以外誰もいないので気にする人もいなかった。
時刻が12時を過ぎた頃、拓海のスマホに一本の電話が入った。
表示された名前は“諒平さん”だった。
「諒平さん? どうかしたんですか?」
泣き止んではいたが鼻がつまり、鼻声になってしまった。
『拓海ちゃん? なんかすごい声だけど、風邪でも引いた? それとも明きゅんと静ちゃんがいなくなって泣いてた?』
諒平は拓海の今の状態を言い当てていた。
「何で知って……?」
『約2時間前まで、静ちゃんと一緒だったの。それで、伸晃さんと拓海ちゃんの2人に渡して欲しいっていうものを預かったんだけど、私達の家まで来てもらえるかしら? 出来たら、鈴きゅんも一緒に来て欲しいのだけど』
静からの預かり物、そう言われても全く想像が出来ない。
「鈴も?」
『そう、静ちゃんから手紙を預かったから』
自分の名前を言われ、泣き腫らした目で鈴成は拓海を見つめた。
「今すぐにでも行きたい所ですが、何時頃であれば行ってもいいですか?」
『預かったものは4時以降であれば。相手が伸晃さんだけで大丈夫なら3時頃でもいいけど、あの人は何も知らないわよ』
諒平も仕事がある。なるべく早く渡したいと思うが、そういう訳にもいかない。
「では、4時に着くように行きますね」
『分かったわ。あ、静ちゃんのスマホがあったら持って来てもらえるかしら』
「分かりました。では、後ほど」
『ええ、後でね』
電話が終わると、鈴成が質問をしてきた。
「諒平さん、何だって? 俺の話も出たの?」
「うん、詳しくは会ってからって。鈴も一緒に行こう」
今、静くんからの手紙の事を言ったらすぐにでも飛び出して行きそうで、拓海は言えなかった。
あまりにも弱っていた鈴成は拓海の言葉に素直に頷いた。
一方、諒平はというと。
電話を切った後、バックヤードでメッセージカードの束を見直していた。
静の几帳面な字で『ごめんなさい、さようなら』と書かれている中ではなく、外側に1人1人の名前が書いてある。
隅に半年後と書かれていることにさっき気がついた。
よく見てみると鈴成には2枚のメッセージカードがあって、隅には“すぐに”と“半年後”と書かれていた。
半年後と書かれたメッセージカードを全て封筒に入れていく。
全てをよく見ていたら、鈴成と同じように2枚のメッセージカードが他にも出てきた。
「あ、拓海ちゃん? 静ちゃんの手紙を敦くんと誠くんにも渡したいの。連れて来てくれるかしら?」
『あの2人もですか? 分かりました。とりあえず連絡してみます』
半年後のメッセージカードは封筒に入れて、開かないように封をした。
すぐにのメッセージカードと拓海と伸晃にと渡されたものも外からは見えないように少し大きめの封筒に入れて簡単に封をした。
諒平はその両方を鞄に入れて一度家に帰り家の金庫の中にそれらをしまい、もう一度仕事の為に家を出た。
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