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第134話.◆調教開始
大野家の屋敷は大きい。いくつも離れがあるため、それが何に使われているのか屋敷に仕えている人でも分からないことが多かった。
前を行く晴臣さんと吾妻について行く。
正門ではない入り口から入る、その直前で足が止まる。
ここに入ったらきっと自分は自分でいられなくなる。
もう2度と出られないかもしれない。
1つ息を吐き門をくぐった。
その門のそばにある窓が殆ど無く、コンクリートで出来た建物の前で晴臣さんと吾妻は足を止めた。
「ここ?」
「そうです」
「静さん、ここに入ったら調教の開始になります。晴臣、ビデオカメラの用意は出来てるよね?」
「あぁ、昨日の時点で充電を始めてたから大丈夫だろ?」
2人の会話で何かをビデオカメラで撮影することが分かる。
2人の雰囲気も敷地内に入ったらガラッと変わった。
もう、自分が上の立場では無い。
建物内に入って驚く。
鉄格子で区切られてそこに1人1人入れられていると思っていたが、そこは何も無いひとつながりの空間だった。
間仕切りはトイレとシャワー室くらいだろうか。
「静、ここで服は不要なものだ。全て脱ぎなさい」
「え?」
確かに見回してみればここにいる人達はみんな全裸だった。
「早くしなさい。それとも立場が分かるように殴ってあげようか?」
ニヤリと不敵に笑う吾妻に恐怖を感じる。
泣きそうな顔で『調教をしたくない』と言っていたのと同じ人物とは思えなかった。
フルフルと首を横に振ってから、1枚また1枚と服を脱ぐ。下着を脱ぐ事に抵抗を感じるが、殴られるくらいならと全裸になった。
「遅かったが、まぁいいだろう。そのネックレスは? 指輪?」
「母の形見です」
「そうか、それなら秀明様も咎められないだろう」
真っ赤な首輪を晴臣さんが持って来るのが見える。
「秀明様からの贈り物だ。お会いしたら御礼をちゃんと言うんだぞ? わかったな」
首に直接触れる部分は傷が付かないようにふわふわとしているがこんな贈り物は嬉しくない。
「静?」
「分かりました」
首輪をつけられ、そこに繋がっている鎖を引っ張られる。
「みんな、新入りの静だ」
「静って女の子?」
「いや、男だよ。仲良くしてやってくれ。それと、里緒 。今回も頼むよ」
「分かってる」
鎖の端をどこかに固定される。
「静、男にしてもらえ。晴臣、ビデオカメラの準備はいいか?」
吾妻の言うことがさっぱり分からない。どうしたらいいのか分からずその場に膝を抱えて座った。
「こっちはいつでも」
チャリッと鎖の音がした。
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