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第141話.◇静からの手紙②
「写真に撮っても写らないから、ちゃんと覚えてね」
諒平はそう言うと1階に戻った。
鈴成は静の几帳面な字を忘れないように読んでいく。
愛しさが込み上げ、そして悲しみが広がる。
読み終わるとまた涙が溢れて止まらなくなる。
「待たせたな」
鈴成はそう言うと机とは反対の壁に寄りかかる。
「誠、先にいいよ」
「うん、わっ、本当に字が浮き出てくる」
『誠へ 泣いてないか心配だよ。1人で寝るの怖くないか? 僕はしばらく離れなくちゃいけなくなった。いつ帰れるかも分からない。でも、絶対に帰るから。待ってなくてもいいから、帰った時には笑顔を見せてね。静』
「……っ…ふぇっ……ゔっ………し、ずかぁ、うわぁーん」
誠は泣き崩れてしまった。
それでも、敦のためにそこから移動する。
敦もメッセージカードを光にかざす。
『敦へ 敦には長谷くんがいるから少し安心かな。僕はどうしても行かなくちゃいけない所ができたから行ってくるね。いつ帰れるかはわからないけど、必ず帰るから。待っててとは言えない。でも、帰った時にはたくさん話そうね。静』
「静、行かなくちゃいけないって、どこだよ! 待ってるに決まってるだろ………バカっ」
鈴成は敦がそこから離れるともう一度メッセージカードを光にかざした。
『鈴成さんへ 急にいなくなってごめんなさい。抱いてくれたことも指輪をくれたことも本当に嬉しくて幸せです。
でも、僕は行かなくちゃいけなくて。必ずあなたの元に帰ります。待っていてくれますか?自力で帰るので、探さないと約束して下さい。静 大好きです』
小さく後から付け足されたと思われる“大好きです”の文字が助けてと言っている様に鈴成には見える。
静がどんな気持ちでこれを書いたのか考えるだけで、鈴成は涙が溢れるのを止められなかった。
2階で3人が号泣してる時、1階では諒平が静から預かったものを拓海と伸晃に渡していた。
1階にある間接照明の光を調節する。
「メッセージカードをここにかざしてみて」
『これはサファイアという危険ドラッグです。これについて、国際化学研究センターの有馬森 さんに調べてもらって下さい。僕のスマホからかければ話は簡単に進むハズです。これは僕の予想だけど、明さんは有馬さんの所にいると思うよ。 静』
「サファイアってあの? それに有馬森さんと知り合いって静くんが何者? え?明さんが?」
「森? 森がどうかしたの?」
諒平が拓海の言葉に反応する。
「諒、有馬森さんと知り合い?」
「伸晃さんまで。森は同級生よ。明きゅんとよく3人でいたの」
拓海も伸晃もその学年は凄い人ばかりだと思っていた。
「諒平さん、有馬さんて今海外にいるんですか?」
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