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第142話.◇Skypeで話そう①

「森は、確か始めはイギリスにいたけど、今はどこだったかしら。ま、あの子の場合、研究に没頭すると昼夜関係ないし、とりあえず連絡してみたら?」 持ってきた静くんのスマホを取り出すと電話帳から有馬さんの連絡先を表示する。 世界的にも有名な人に電話するなんてと、拓海は緊張しながらコール音を聞く。 『もしもし、静くん? 電話出来る環境なの?』 「あ、あの。静くんではないのですが……」 『森? あ、電話か? すまん』 「明さんの声だ………」 『え? あー、あなたが拓海? 顔見たいからSkypeにしようよ。そっちのID教えて。友達申請するから』 明の顔を見られるとあって、拓海は急いで自分のスマホでSkypeのIDを確認する。 「僕のIDは×××××××です」 『申請したよ。確認してみて』 IDをすぐに覚えるとか記憶力凄い、と拓海は思いつつスマホで確認する。 Shinより友達申請がきています。というお知らせがあるので承認をした。 「承認しました」 『うん。こっちも確認出来た。電話切るね』 スマホでは小さいのでタブレットでSkypeを起動させると、回線を繋ぐ。 『へぇ、やっぱり美人さんだ』 画面にはボサボサ頭の白衣姿の人が口元だけ笑って映し出されている。 雑誌だったか、テレビだったかで見た森の姿そのものだった。 「あの………っ、明さん」 画面の端に映った明の姿に、拓海は嬉しくなって涙が出てきてしまう。 『後でゆっくり話したらいいよ。それより、どうして静の携帯から電話をかけてきたのかな?』 森の言葉に拓海は涙を拭うと、静が残して行ったサファイアの残骸を見せる。 「これはサファイアという危険ドラッグで、あなたに調べて欲しいと静くんに託されました」 『サファイア………あ、燃えてないものもあるんだ。明日には日本に行くよ。それは日本から出せないから』 森は見た目とは違って行動的な様だった。 「あの、有馬さんはサファイアの事を知っているのですか?」 『え? うん、知ってるよ。以前調べたこともあるんだけど、燃えカスしか無くて詳しくは調べられなかったんだ。原石があるのなら、色々と調べられそうだね』 拓海が以前受け持っていた患者の中にも、サファイアの作用で苦しんでいる人がいた。 そして、静にもサファイアが使われることはほぼ間違いないだろう。 「前に調べた時って、サファイアを使われた人の回復に関してはどうだったんですか?」 『どういうメカニズムであれだけの作用を起こすのかすら分からなかった。今回、そこから調べたいと思う。うまくいけば、どうすれば元に戻るのかも分かると思うよ』 その研究にどのくらいの時間がかかるのかは分からないが、拓海は早く色々なことが分かればいいと思っていた。

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