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第143話.◇Skypeで話そう②
『じゃあ、俺はそっちに行く準備をするから。明と話したら?』
「待って下さい。有馬さんが来日するなんて、大騒ぎになりませんか?」
以前プライベートで来日した時も凄いことになっていたのをテレビで見た気がする拓海は心配になる。
『さすが、拓海はよく気がつくね。ちょっと待ってて。ほら、森、動くな』
『ちょっと、メガネ返せよ。見えないって』
『こんなもんか。この格好で行かせるよ。拓海が空港まで迎えにいってやって?』
明が森のメガネを取り、ワックスか何かで髪の毛を整えた。それだけのはずなのに、画面に映った森の姿はさっきとは全くの別人だった。
「美人」
拓海は思わずそう口にする。
そうしてからこんな美人に、自分も美人だと言われたのかと思うと恥ずかしくなる。
『コンタクトは面倒なんだよ!』
『じゃあまた報道陣に揉みくちゃにされるか?』
『わかった。髪の毛はなんとかする。でもメガネはいいだろ?』
子供のように駄々をこねる森がおかしくて、拓海はクスクスと笑う。
『ようやく笑ったな』
気がついたら画面には明しか映っていなかった。
「今どこにいるんですか?」
『アジアのどこか』
「広いですね」
『詳しく言ったらこっちに来ちゃうだろ?』
明は拓海が自分の居場所が分かったらどう行動するのかなんて、手を取るように分かっていた。
「有馬さんがこちらに来たら、明さんはまた別の所に行くの?」
『そうしようと思ってる』
「そっか。身体に気を付けて下さいね」
『ああ、そうだな』
このままではこの回線を切ることなんて、拓海には出来そうもなかった。
「JOINだけでもいいから、たまには連絡して」
『気が向いたらな』
「それでもいいですから」
明の後ろに森がまた映った。
髪の毛は整っていてメガネをかけている。
メガネがあっても美人なのは変わりなかった。
『拓海、明日の午後5時頃に羽田に着くのでそっち行くから迎えに来てよ』
「分かりました」
『こいつ、極度の方向音痴だから、頼むな』
「ふふっ、そうなんですね」
また、こうやって話せるのはいつになるんだろう。
「拓海ちゃん、鈴きゅん達が降りてくるわよ」
諒平の言葉に拓海はすぐに回線を切る。
「また」
『ああ』
タブレットは待ち受け画面に戻ってしまった。
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