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第146話.◆仕切り直しで挨拶②
「私は和泉、平和の和に温泉の泉で和泉。イズミって呼んでね。私がここでは1番年上なの。何か困った事とかあれば言ってね」
「ありがとうございます。でも僕、1番年上はサクさんだと思ってました。女性の方々は皆さんお綺麗で、可愛くて年齢が分かりません」
僕の言葉に女性陣はみんな微笑んだ。
「シズカ君て将来、結構なモテモテ君になりそうな気がする!」
「本当にね! あんな事スラスラって言えるだけでもスゴイよね」
「地味に嬉しいわ」
「イズミさんが嬉しいとか言ってるの初めて聞いたー」
女性陣は全員で話し始めてしまった。
そこに入り込むのは無理だから、まだ話をしていない男性を見る。
「後は俺とヒサギか? シンとフユはさっき話してたよな? 俺は夕斗、夕方の夕に北斗七星の斗で夕斗。ユウトでいいよ。さっきのシズカの声やばかったな」
「え?」
急に自分の声のことを言われてどうしていいか分からなくなる。
「そんな変な声出してましたか?」
「ん? いや思わず勃ちそうなくらい可愛い声だったなぁって」
「俺は少し勃った。あ、俺が緋紗輝。ヒサギって呼んでくれ。目が見えたらシズカがイく顔も見られたのにな。あ、サクは見たんだよな? どうだった?」
さっきの出来事からは少し浮上したのかサクさんはちょっと微笑んで僕を見た。
「めちゃくちゃ可愛かったぞ」
「やっぱなぁ〜。サク、シズカってどんな顔してる?」
「顔か? 目はちょっとタレ目でデカイな。鼻はスッとしてて、唇はツヤツヤしててポテッとしてるかな。人の顔なんてどう言えばいいか分からん」
自分が人からどう見えてるのかなんて正直よく分からない。
最近よく“可愛い”と言われるが、やっぱり違うと思う。
「あの、僕が可愛いとかないと思う」
「いや、そうとう可愛いと思うな。こういう時だよな。目が見えたらって思うの」
「ヒサギも? 俺もそう思う」
もっとみんな塞ぎ込んでると思ってたが、そうでもなくてちょっと驚いた。
でも、大切な人と離れて辛くないわけがない。
例えその人のことを忘れてしまっているとしても、ここにいたいと思っている訳はない。
「あの、たぶん明日の朝には僕もサファイアを使われて色々忘れると思うので、皆さんに伝えておきたいことがあります」
全員が話すのをやめてこちらを見た。
「ここを出た後なんですが、皆さんの心のケアをしてくれる人を紹介したくて。今は聖凛高等学校で養護教諭をしているんですが、元は心療内科医で地迫拓海という人です。信頼できる人で無理に話を聞こうとはしない人なので安心して下さい。ただ、僕のことは聞かれるかもしれませんが」
「チサコタクミね。それと、シズカの大切な人はスズナリだったな。ちゃんと覚えたよ」
サクさんがそう言うと、他の人達も頷いていた。
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