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第147話.◆記憶

「あ、そう言えば前に全員で話してた時にサファイアを使われても寝なければってあったよね?」 「あーあった。本当にそうかは分からないけどね」 マナさんとヒヨリさんがサファイアの事を話し始めた。 「サファイアのことですか? 詳しくお願いします」 「あのね、いつもサファイアを使われた後に命令されてから必ず寝てしまうの。だから寝なければ命令は完了しないのかもって。でも寝ないなんて無理だから、結局のところどうなのか分かってないの」 寝なければ命令は完了しない。 本当にそうであれば、鈴成さんのことも、明さんや拓海さんや敦、誠のことも覚えていられる? 「本当かどうか分かってないし、寝ることが全く関係ないこともあると思う。あまり考え過ぎないようにな」 「ありがと。こんな風に皆さんとお話し出来るとは思ってなかったので嬉しいです」 サクさんは僕の頭をポンポンとすると自分の場所に戻って行く。 「あの、フユくん、年上の方だからフユさんですね。ごめんなさい。フユさんに聞きたいことがあって」 「ん? 何? それに呼び方は何でも大丈夫だよ」 「この中で秀明さんに直接呼ばれたのはフユさんと僕だけですよね?」 「そう、だね。他のみんなは拉致されて来たからね」 ターゲットの大切な人は危害を加えられる。 「フユさんの大切な人は無事ですか?」 「その事はここに来た時に聞いたよ」 「シンさん」 「ほら、忘れるように言われる前にね。事故に遭ったけど、一命は取り留めたって。眼が覚めるかどうかは分からない状態だったみたいたけどな。その後怖くなってすぐに来たって言ってたよ」 亡くなっていないのなら、良くないけど良かった。 大切な人が誰もいなくなった世界に戻るのは、きっと辛いことだから。 その後、シャワーを女性から順番に浴びて、壁際に設置されているベッドで眠る。 この建物の中心にあるベッドは秀明さんとスる時に使われるらしい。 気に入らなかったら直ぐに他の人を呼ぶんだって。 一度に2人、3人の相手をすることもあるらしい。 サファイアを使われても寝なければ命令は完了しない。 その事が頭に回りつつ眠った。 今後は何があっても眠らないと決めて。 フッと眼が覚めた。 回りを見て、やはり夢ではなかったと思う。 膝を抱えて壁に寄りかかると、みんなの事を思い出した。 鈴成さんも明さんも拓海さんも敦も誠も、他にもたくさんの人が頭の中に出てくる。 思い出すのは幸せな事ばかりで、でもその幸せは手の平から零れ落ちてもう掬うことは不可能だった。 サファイアの命令が完了しない場合、そこからは全てが演技となる。 みんなの事を覚えている状態で秀明さんに抱かれるのだろうか。 それを嬉しいと笑えるのだろうか。 ある考えが頭をよぎる。

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