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第164話.◇定例会議②

「大切な人のことは全て忘れています。鈴成さんのことだけでなく、おそらく拓海さんやお友達のことも覚えていないでしょう。今は建物内にいる他の拉致されてきた人達を助けたい、その思いに突き動かされていますね」 「サファイアは何回使いました?」 「静さんへの頻度は高くて、始めの1週間は毎日、その後も一日置きには使用されています。昨夜も、、とうとう視力が奪われました」 視力が奪われた。つまり目が見えなくなったということだ。 それに俺のことを忘れた? 兄貴のことも佐々木くんや河上くんのことも? 「そうか、今日は吾妻が持ってるの、持ってきたか?」 「そうでした。これです」 灰色の燃えかすの中に少し大き目のブルーの塊がある。 あれがサファイアなのか? 「これだけの大きさがあると有難い。この前のだけでは調べる事も限られてしまうからな」 有馬さんはそれをしまうとコーヒーを1口飲んだ。 「視力以外にも奪われる可能性は?」 今度は兄貴が質問をする。 「もしかしたら、耳も声も奪う予定かもしれません」 「どうしてそう思うんですか?」 「目が見えないというのは、建物内では普通の事です。他の人達は1人を除いて全員目が見えませんから。もちろんサファイアの影響で。なので静さんのことをみんなでフォローすることになるでしょう。どうやらそれがあの御方にはお気に召さないらしいので」 あの御方という人は最低な男だということだけは分かる。 「静さんを孤立させたいと別に建物を建てたいとまで思っているようです。ただ奥様が賛成するとは思えないので、それは実現しないでしょうが」 吾妻さんはコーヒーを1口飲んでから続ける。 「声がコミュニケーションをとる唯一の手段なので、それが奪われたら必然的に孤立しますから」 「1人を除いてって言いましたよね? 1人は目が見えているんですか?」 気になって俺も質問をする。 「白黒の世界だと言っていますが見えているようです。ただ、日によってはぼやけてよく見えない事もあるようで、サファイアの影響は強いですね」 「サファイアを使った時の命令の順番など分かるものはあるかな?」 「日記をつけていて、そこに書いていますが」 「建物内にいる子達が解放された時にそれが有ると嬉しいな。研究が進んでサファイアの命令の除去の方法が分かった時に必要になるはずだから」 「分かりました。次回の時に持って来ますね」 「頼む」 次回か。定期的に集まっているのか? 「静は生きているんですね?」 「えぇ、あの御方が静さんの命を奪うことはあり得ないと思いますよ。おそらく、ずっとそばに置いておこうと考えているので」 静がいつ外に出られるかは分からないと言いたいのだろう。 外に出られても、今までのように笑顔を見せてはくれないかもしれない。 そんな事より、俺のこともみんなの事も認識出来ないかもしれないか……。

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