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第167話.◆みんなの優しさ
「シズカ?! 大丈夫か?」
「サクさん? 目が見えなくなってしまって、躓いてしまいました」
ふわっと抱き締められてぶつけた所を撫でられる。
「しばらくはどこに行くにも俺が付いてってやるから、声かけて」
「でも、悪いです」
「今までみんなもそうしてきてるから、気にするな」
「……ありがと。お言葉に甘えます」
「ん」
結局サクさんがベッドまで連れて行ってくれた。
みんなは慣れているからかもしれないが、目が見えなくても自由に歩き回れることが凄いと思う。
疲れていたからか眠れないと思っていたのに結局寝てしまった。
起きて目を開けてもそこは暗闇の世界で軽くパニックになる。
「え? 何? どういう事?」
どんなに首を左右に動かしてもそこは真っ暗闇で、真っ黒な世界だった。
「シズカくん?」
心配そうなフユさんの声がする。
「フユさん?」
「うん、大丈夫? 目が見えなくなって初めて起きた時はみんなそうなるんだよ。僕もパニックになったから」
そう言われて、昨日の夜『目は必要なくなった』とサファイアが充満する部屋で言われたことを思い出した。
サファイアの威力を自分で体験すると、改めて凄いと思う。
こうも簡単に目が見えなくなるなんて思いもしなかった。
徐々に見えなくなっていくのかと思ったが、そういうわけでは無かった。
「目もだけど、体は辛くない? 昨日の酷かったから」
ぐっすり眠ったからだろうか、違和感はまだあるが痛みはだいぶ薄れてきている。
「心配してくれてありがとうございます。大丈夫です」
みんなには自分が辛いと思わせないようにしないと。
リオさんのように自分もここに残るとは絶対に言わせたくない。
もちろん、リオさんにもそう言わないようにしてもらわないといけない。
「シズカ君、おはよう」
「マナさん? おはようございます」
女性陣に話しかけられるのは久し振りのことだった。
「本当は体、辛いでしょ? 無理しなくていいから」
「本当に大丈夫ですよ?」
「秀明様は女の子にだって慣らしたりしないのよ? 男の子の方が確実に辛いでしょ」
どれだけみんなを傷つけてきたのだろう。
口振りからすると、女の子相手でも生で中出ししていると思われる。
男の自分でも泣く程嫌なのだ。その嫌悪感は想像を絶するものだろう。
「僕は女の子の方が辛いと思います。あぁ、男女関係なく辛いのかな。でも僕はこうなるって分かっていたから、覚悟もしていたし」
誰か他の人が秀明さんの相手をするくらいなら、自分が相手をした方が辛くないと本気で思う。
「皆さんに秀明さんの目が向かない様に頑張りますね」
誰からも返事はないが、僕の気持ちは届いた様に感じた。
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