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第170話.◆疑問
はたかれた頰には冷水が気持ちいいが、段々と体が芯から冷えてガタガタと震え始める。
「静さん、入りますね」
晴臣さんの声がしたと思ったところで意識を失った。
気が付いたらベッドの上だった。
体はスッキリとして、ポカポカしている。
おそらく晴臣さんが色々としてくれたのだろう。
起き上がろうとして、ベッドサイドに誰かがいることに気がつく。
「誰?」
「静さん、良かった気が付いて。寒くないですか?」
「晴臣さん。寒くない。ポカポカしてる」
まだみんな起きているようで、気を失ってからそんなに時間が経っていないと分かる。
「体……ありがと」
「勝手に触ってすみません。中に残っていたのは全部出せたと思います」
「うん。ほっぺたはアザになった?………あれ?」
なんだか前にもこんなことがあった気がする。ほっぺたが青紫色になったこと。
誰かに助けを求めて………誰かって誰?
「静さん?」
晴臣さんに呼ばれて疑問はスッと消えていく。
「何でもないよ」
「そうですか? 頰は少し赤くなった程度で、アザにはならないと思います。もう少し冷やした方が良いかとは思いますが。これ、当てますね」
手に冷たいものが当たる。冷やしたタオルかな。
頰に当てられると、まだ熱を持っているのか気持ちがいい。
「ハル君、少しシズカ君と話してもいい?」
「リオさん?」
「そうよ。2日連続で秀明様の相手をするなんて、大変だったでしょ?」
手を握られた。
「大丈夫ですよ。2日くらいで根を上げられません。これからのことを思ったらまだまだです」
「何でも1人で背負わないで。明日は私が秀明様の相手をするから」
「ダメです」
リオさんがギュッと手に力を入れる。
「シズカ君」
「絶対にダメですから。それに秀明さんは僕を指名するんじゃないかな」
「このままだとシズカ君が壊れちゃいそうで」
リオさんの声が震えてる。泣きそうなのかな。
「壊れてもいいんですよ。誰も僕のことを待つ人はいませんから。今、1番僕のことを必要としているのは、秀明さんですし」
性欲処理の道具として女の子が扱われるなんて、あってはいけないことだ。
そんなのは僕がなればいい。そうなると覚悟を決めてここに来たのだから。
「リオさんも他の皆さんも、外に出たらどうしたいかだけ考えてて下さい」
リオさんの手を離そうとしたらまたギュッと握られる。
「シズカ君を待ってる人、いるんだよ」
どんなに考えてもそんな人はいないという結論にしかならない。
でも、夢の中で優しい人がいた気がする。
誰だろう?
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