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第173話.◆高熱
「……うっ…はぁはぁ……んっ………」
熱でうなされているシンのそばに全員が集まっていた。
「シンさん……晴臣さん、やっぱり熱高いの?」
「そうだね。あぁ、39℃あるね。風邪でもなさそうですが、しばらくはあまり近寄らないように」
「でも………」
「静さんは点滴しますから、自分のベッドに戻って下さい」
静は食事が摂れない日が続いていて、栄養を点滴で補給していた。
晴臣も色々と考えて静には食べやすいようにお粥にしたりもしていたが、食べられても秀明の相手をした後に全て吐いてしまうのだから、どうしようもない。
ここに来た時よりも確実に痩せてしまっている。
来た時からもう少し太った方がいいと思えるくらい痩せていたのだから、今はガリガリだった。
「僕は大丈夫だからシンさんに付いていてよ」
「点滴を始めたらそうしますから大丈夫です。それに、静さんが倒れたら新一郎に付きっ切りで看病出来なくなりますよ」
「う………分かった」
静は迷わずに自分のベッドに戻ると横になる。
目が見えなくなって色々と怖かった事は乗り越えて、今では他の人と同じ様に普通に歩き回るし、誰が何処にいるのかも分かるようになっていた。
点滴用の針は刺したままにしてある為、点滴をセットするのに時間はかからない。
本来なら利き腕とは逆に針を刺すのだが、静は何かを耐える時に左腕を傷付けることが多い為、右腕に点滴用の針を刺している。
「今日も2時間くらいで終わります。じっとしてて下さいね」
「シンさん、大丈夫かな?」
「大丈夫ですよ。静さんは少し寝て下さい」
晴臣は点滴に眠れるように薬を追加する。
しばらくすると静は寝息を立て始めた。
それを確認してから晴臣はシンの所に戻った。
「……ううっ…ひ、な………うっ……はぁはぁ………」
「ひな? 陽菜か?」
晴臣は驚く。忘れたはずの大切な人の名前を呼んでいるのだ。
そういえばサクにもこんな事があったと思い出す。
「咲弥、少しいいか?」
「どうかしたのか?」
「新一郎のこと、どう思う?」
「ここではな。下で話すよ」
サクはそう言うと地下へ向かった。晴臣もそれに続く。
鉄の部屋の隣の部屋に入ると扉を閉めた。
「咲弥?」
「シンだけどな、たぶん最後にサファイアを使ってからもう少しで1年なんだと思う」
確かにシンがここに来たのは夏の暑い時期だったと晴臣は思い出す。
「それと今回の高熱に関係が?」
「俺の考えだけどな、サファイアの効力は1年なんだと思う。それが無くなる時に高熱が出るんだと思う」
「サファイアの効力が切れるってことか」
「シンの場合、どうなるのか分からないが、殆どの事を思い出して、目も見えるようになる可能性が高いと思う」
晴臣は新一郎の状態がどうなるか確認したら有馬さんに連絡をしようと決めた。
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