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第179話.◆自己嫌悪

「シズカ君?!」 「シズカ?!」 自分が言ってしまった言葉にみんなが反応する。 静は慌てて取り繕う。 「なんてそこまでは思わないけど、久々の平手打ちは厳しいな」 「静さん」 「うん、洗い流すからシャワー室で治療して」 「分かりました」 晴臣は救急箱を持って静の後を付いて行く。 シャワー室に入る為のドアの前にはサクが怒ってることを隠さずに立っているのがわかる。 「とりあえず、入れ」 サクがドアを開けて中に静、晴臣、そしてサクが入るとドアが閉められる。 シャワー室の床にペタンと座った静は2人がいる方向に顔を向ける。 「ったく、目が見えない分耳から情報を得てるお前らは、言葉だけでも心の中まで見えることだってあるだろ?」 「ごめんなさい。あんなこと言うつもり無かったのに」 サクは苛立ってシャワー室の扉の横の壁をバンッと叩く。 静はビクッと体を震わせた。 「ごめ…なさっ……」 「違う、俺は自分が腹立たしい。ずっと静の近くにいたのに、お前の苦しみに気付いてやれなかった……いや、気付いていたのに見ないフリをしていた」 「咲弥」 「あまりにもお前が優しくて、その優しさに甘えてた」 「優しくなんてないよ? 優しいのはみんなだよ」 静は不思議そうな顔をする。 そんな静を見てサクも晴臣も苦笑する。 「どうしてそんなに他人のことを思える?」 「んー? よく分からない。でも、みんなが笑顔になると嬉しい」 ふわっと笑う静にはさっきの死を覚悟した暗闇はもう消えたように見える。 「とにかく、治療が先だな。自分を傷つけるなとも言った覚えがあるが、それは今は忘れてやる」 「咲弥は外に出てて」 「分かった」 サクは静を見て複雑な顔をしてから出て行った。 「静さん、傷の手当てをして防水シートを巻いてからシャワーを浴びましょう」 「うん」 「相当痛いと思いますが、部分麻酔はかけますか?」 静は首を横に振る。 「もうこんな事はしないって決めたから。その為にも今回の痛みを忘れないようにしないと」 「本当に良いんですか?」 コクンと頷くのを見て、晴臣は静の左腕に消毒液をかける。 「ぅああああああああっ!!!」 焼けるような痛みが静を襲う。 傷の手当てとシャワーが終わると、静はくたっとして晴臣に抱きかかえられてシャワー室から出てきた。 静を自分のベッドに寝かせると、晴臣はシンの元へ向かう。

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