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第180話.◆目覚め
「シンさん?」
「シン?」
シンの熱が下がり近付く許可が下りたのは、静が自分を傷つけた次の日だった。
左腕も右足も包帯で巻かれていて、痛々しい見た目とは裏腹に、静はシンが目を開けるのをワクワクして待っていた。
「……ん…ん? え? 何で?」
「シンさん?」
「その声、シズカか?」
「え? うん。そうだけど、どうして?」
コテンと首を傾げる静が想像よりも可愛くて、どうして良いか分からなくなる。
「新一郎、見えるのか?」
「ハルさん? あ、見えますね。中心部分はカラーですけど、周りは白黒です」
見える事が不思議だった。
女性陣を見る事はできないが、静のことも直視出来ない。かと言って他の男性陣を見ても、全裸だからどこを見ればいいのか分からなくなる。
「サク、俺はどこを見ればいいのか分からない」
「バカだな。何も言わずに舐め回すように見りゃいいだろ?」
「ちょっと、サク、あんた最低なんだけど」
「うるせえな。俺は女には興味ねえから安心しろよ」
男性陣は笑ってから、ん? と黙り込む。
「それって俺らには興味あるってことか?!」
ヒサギがサクの声がした方に引きつらせた顔を向ける。
「はっ、どんだけ自分に自信があんだよ。俺には婚約者がいるからおめーらなんて目に入らねぇよ」
「え? ちょっと、あのお相手と婚約してたの?」
マナが1番に食いついた。というか、マナしか食いつかない話題だった。
「えー。そっかぁ。結婚するんだ。あ、どっちが子供産むんだろ? いやん」
「マナ、お前うるさい」
「じゃあ、黙るからどっちが子供産むことになるのか教えてよ」
「ああ? ふざけんな。お前には関係ないことだ」
サクはそう言いながら恋人の姿を頭に思い描く。
急に会いたくなった。会って抱き締めて欲しくなる。
「ふふっ、本当にあの2人仲良いですよね」
静が楽しそうに笑う姿にシンはドキッとする。
「シンさんは大切な人のこと思い出したんですか?」
「なんかまだアイドルを想うみたいな感じだけどな」
「どんな人ですか?」
「可愛い女の子だよ」
「そっか、早くここから出て会いたいですね」
それは静を残してここを出て行くということで、話し相手も晴臣と吾妻だけになってしまう。
他愛も無い話をして笑うことも無くなるのだろうか。
「シンさん?」
「なあシン、目が見えるようになったんだろ? ここにいる中で誰が1番可愛い?」
「え? あー、シズカだな」
「………え?………」
「サクと同じ答えかよ。どんだけシズカ可愛いんだよ! 俺も顔が見てーよ」
静は前にもこうやって誰かに可愛いと言われた気がした。
でも、誰になのかはやっぱり分からない。
思い出したいと思うと頭が割れるように痛くなるので、いつも考えないようにしていた。
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