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第183話.◇口説かれた
頭が痺れるようなキスから解放されると、肩で息をしていた。
してきた本人は何でもなかったように、息も乱さずこっちを見て微笑んでいる。
「さっき言った付き合っては、こういうこと込みのってことなんだけど」
「え?」
「晴臣に惚れたの。だから俺と付き合ってよ」
この人は何を言い始めた?
「俺、もう38ですよ?」
「うん、同い年だからちょうどいいよね」
そう言われて明さんと同級生だと言っていた事を思い出した。
「あなたなら海外でも日本でもモテますよね? 俺じゃなくてもいいでしょう?」
「ったく、同い年の人にこんなこと言うことになるとは思わなかった。………何とも思ってない人からモテても嬉しくないよ。俺はあんたがいいの」
自分のどこが良いのかさっぱり分からない。
「でも」
「反論は聞かない。それでも反論するならまた塞ぐよ」
有馬さんの長い指が唇をなぞる。
得体の知れない何かにゾクゾクする。
「特別な人は作らないと決めていますから、あなたの気持ちには応えられません」
「静のことが綺麗に片付くまで待つよ。明の実家が問題ならそれが解決するまで待ってもいい」
そんな言い方はズルい。
「何年かかるか分かりませんよ?」
「大丈夫。俺は気に入ったら一筋だから。本気で好きになったものは一生物なんだ」
本気で好きだと暗に言われ、顔が熱くなる。
「待ってもらっても俺があなたを好きになるとは限りませんよ?」
「振り向かせる自信はあるよ」
ニヤッと妖艶に笑う有馬さんを見て、もう捕らえられている気がした。
昔から自信に満ち溢れた人に惹かれてしまうのだ。
「勝手に待ってる。それだけは覚えてて」
「分かりました」
頭を撫でられていたら、急に有馬さんが声を上げる。
「あっ! 晴臣はサファイアを吸ったりしてないよね?」
「吸ってませんが、どうして?」
「サファイアには強い催奇形性があるんだ。今のところ吸ってしまった人は子供は産めないから」
「……っ!………静さんは、子供が大好きなんですよ?」
ガンッと頭を殴られたみたいだ。
静さんがターゲットにならなければ、鈴成さんとの将来を考えて子供もってなっていたはずなのに。
「今のところって言っただろ? 吸った人でも子供を持てるように出来ないか。それが今調べてることなんだ。効力が無くなったっていう子が外に出られたら、カウンセリングの後でもいいから連れて来て欲しい」
「あの子達の体を調べるんですか?」
「毒素がどの位残っているのか、生殖機能は大丈夫かとかをね。なるべく負担が無いように考えるよ」
サファイアを吸った人でも他の人と同じように子供が産めるようになって欲しいと思う。
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