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第185話.◇相談①
森さんの研究所を出ると雨音の喫茶店に向かう。
森さんと連絡を取った後にもう1人連絡をした人がいた。
喫茶店に入るといつものようにコーヒーのいい香りがする。
「晴臣、もう来ているよ。奥の席にいる」
「ん。コーヒーよろしく」
「分かってる」
奥の席には少し伏し目がちにコーヒーをすする人がいた。
「拓海さん、お待たせしてすみません」
「大丈夫です。ここのコーヒー美味しくて、何時間でもいられそうですから」
ふわっと笑うこの顔がきっとすぐに苦痛に歪むかと思うと心が痛くなる。
「静くんのことで話があるということですが、何かありましたか?」
「あの、」
「まずは飲んだら?」
雨音がコーヒーを持ってきた。
それを一口飲むと少し落ち着く。
「昨日、秀明様が静さんに薬を使いました」
「薬?」
「えぇ、おそらく媚薬入りのローションを」
拓海さんを見るとそれ程驚いてはいないようだった。
「考えてはいたことだけど、腹が立つね。静くんが何でも自分の思い通りになるって思ってるんだろうな」
「その後、静さんは………」
「自分の体を傷付けた、かな?」
「どうして?」
自分が言えずにいる事を言い当てられた。
「あの子は以前も自殺未遂してるから。殆ど傷は消えているけど、リストカットした事がある」
「え?」
「僕が会う前の事だから、明さんから聞いただけだけど」
拓海さんは手に持っていたコーヒーを見つめる。
「あの子の事は自分の子供のように思ってるんだ。悔しいし悲しいよ。でも生きていてくれるなら、それだけでも良いとも思ってしまう。写真、見せて」
写真を撮ってきて欲しいと言われ、スマホで音が鳴らないように設定(本来は出来ないが、ネットで色々と調べた)し、咲弥に見つからないようにして撮った。
血を流し、死にたいと言ったその瞬間の写真。
痛々しく、全てを諦めた顔。
全身を撮ってしまったために、貞操帯も全てが写っている。
結局あの後は写真のことなど忘れていたので、その写真しか撮らなかったから、それを見せる他ない。
撮れなかったなんて嘘はきっとこの人には通用しない。
「あの、本当に見ますか? 撮り直して来た方がいいと思いますが」
「大丈夫だから、見せて」
スマホを操作し、写真を表示する。
「これ、です」
スマホを拓海さんに渡したが、顔を見られずに俯く。
「……っ………」
拓海さんが息を飲むのが分かる。
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