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第186話.◇相談②

「し、ずか、くんっ………」 声が震えている。 見なくても涙を流しているだろうと容易に分かる。 「それを撮った時、静さんは死にたいって言ったんです。色々と限界だって俺も見ていて分かっていたはずなのに」 「そっか………あなたも辛いですね」 まだ少し震える声で紡がれた言葉は、俺を心配するものだった。 思わず顔を上げると、目を真っ赤にして心配そうにこちらを見ていた。 こんな事なら激しく罵られた方がマシだ。 「どうして怒らないんですか?」 「怒るのなら秀明氏にで、あなたにではありません。それに怒りは何も解決にはならない。というより、最悪の結果になる火種になりかねないと僕は思っています。冷静に状況判断出来ることが大切なんです」 穏やかに話す姿は聖母マリアのようだ。 全てを包み込むような穏やかな口調は俺の涙腺も壊してしまう。 「ごめん、なさいっ、」 涙と共に口をついて出たのは謝罪の言葉だった。 もしかしたら許されたいと思っていたのかもしれない。 「あなたは何も悪くありません。本当なら秀明氏も、愛する人の父親だから恨みたく無いんですけどね。静くんをこんな目に遭わせていると知って、許す訳にはいかないな」 拓海さんはどこまでいっても純粋で綺麗だった。 「拓海さん、俺は静さんにどう接したらいいのでしょうか? 傷ついたあの子に何と声をかければ良いのか、分からないんです」 人の気持ちに敏感な静さんのことだから、そんな俺の葛藤も気が付いているかもしれない。 「難しいかもしれませんが、今まで通り何もなかったように接してあげて下さい。気を遣えば気を遣う程、あの子も気を遣ってしまうので」 「はい」 返事はしたが、そう出来る自信は全く無かった。 「静くんは他人の為に自分が犠牲になることを厭わないでしょう? どうしてそんなことが出来るのかって思いませんか?」 「思います。拓海さんは、その理由を知っているんですか?」 静かに首を横に振ると儚げに微笑む。 「これは単なる憶測に過ぎないけど、静くんは自分が受けた嫌な事を他の人には味わって欲しく無いと思ってるんじゃ無いかと………。ご両親の事故の後上手く声を出せなくなって、酷いことも色々と言われたみたいで」 「そんなことが?! 1度に両親を亡くして傷付かない人などいないと言うのに?」 俺と一樹が本島家から離れてからの事だった。 「その時です。リストカットしたのは。怖さもあったのか傷は浅かったらしく、おおごとにもならなかったみたい。でもその時の友人とは一緒にいたくないと思って、同じ中学の子が1人もいない高校に進学したんです」 静さんの心の傷を思うとやりきれない。 「高校で素敵な友人が出来て、好きな人も出来た。幸せになっても良いと思い始めていたのに、、何でこんな事になってしまったんだろう」 拓海さんの目から涙がこぼれる。

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