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第193話.◆お別れの挨拶②
「フユさん」
「うん」
「ずっと近くにいてくれて、気配だけでも癒されてました。何かと話し相手にもなってくれてありがとうございました」
「僕もシズカくんと話すの楽しかったよ。まだまだお話しようね」
フユは着飾った服の袖口で涙を拭う。
「ヒサギさん」
「おう」
「ヒサギさんてたぶん今まで自分の周りにはいないタイプの人だったと思うんです」
「自分で言うのも何だけど、チャラチャラしてるからな」
「ふふっ。でも、それって照れ隠しだったりするじゃないですか。何気ない一言で救われる事も多かったんです。ありがとうございました」
「俺はシズカの顔が見たかったよ。いつか絶対に見せてな」
ヒサギは寂しさを隠して笑う。
「ユウトさん」
「うん」
「あまり口数は多くないけど、柔らかい雰囲気はいつでも安心出来ました。ただ隣にいるだけでゆったりとした気分になれました。ありがとうございました」
「俺も一緒にいてあったかい気持ちになったよ」
ユウトは少し照れて微笑む。
「シンさん」
「おう、俺か」
「まずは目が見えるようになって、大切な人の事思い出せて良かったですね。ここの事色々と教えてくれて、僕の事気にしてくれてありがとうございました」
「本当にシズカは優しいな。もっと違う形で出会いたかったよ」
シンは今にも消えていなくなりそうなほど儚い静を見つめる。
「サクさん」
「俺が最後か」
「なんか、サクさんはお兄ちゃんみたいだったな。厳しいけど優しくて、たくさん叱られたね。頭撫でてくれるの嬉しかった。本当にありがとうございました」
「手のかかる弟だな。ったく、頭くらい何度でも撫でてやるよ」
サクは静のそばまで行き、頭を撫でてやる。
「みなさん、外に出ても色々とあると思うんです。記憶の事とかもあるだろうし。でも、大切な人達と一緒に幸せになって下さい。いつになるか分からないけど、僕がここから出られる日がきたら、会いに行きますね」
「シズカ」
「シズカ君」
本当の別れはまだ少し先だと分かっていても、こんな挨拶をしてしまえば、まるでその日はすぐそこまで迫っていると考えてしまう。
全員が目に涙を浮かべ、それぞれを思う。
静はみんなのこれからの幸せを願って。
静以外の全員は、静が少しでも苦しくないように、一日も早くここから出られるようにと願っていた。
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