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第194話.◇大切な人達

秀明が静以外の全員をクリスマスクルーズに合わせて解放すると正式に決めたことを受け、晴臣と吾妻は拓海も連れてあの子達の大切な人達と顔合わせをした。 それは静にその事を告げてから2週間後のことで、その日まで後2ヶ月となっていた。 場所は秀明が用意したが、それは自分を訴えることなどないように説得するようにという命令付きだった。 「つまり生きていて、その日になれば会えるって事ですか?」 「はい。そういう事になります。ただ咲弥さん、新一郎さん、和泉さんの3名以外は目も見えず記憶も失っていて、あなた方の事も分からなくなっています」 吾妻の言葉にそこに集まった面々は喜んでいいのか分からなくなる。 「結構急ですよね。今まで何の手がかりもなかったのに。信じていいんですか?」 そう言われるだろうと用意した一人一人の写真を晴臣が並べる。 大切な人達に会ってくると正直に話した為、隠し撮りではない。 みんな笑顔だった。 静の写真もある。 笑顔だが無理をしている。拓海にはそう見えた。 それでも数ヶ月前に見た写真より元気そうで良かった。 「写真の枚数が10枚ということは、10人が出て来るってことか? あれ? 写真が1枚残っているが」 それはフユの写真だった。 「来る予定の方は怪我をされていて、体調が良ければ来られるとおっしゃっていましたが」 「俺のことですか?」 車椅子の青年が入って来た。 晴臣がその青年にフユの写真を渡すと、その写真を見てホッと息を吐く。 「本当に生きているんですね。冬が出て来る前に俺も目が覚めて良かった」 「訪ねた日は目を覚まされた直後でしたからね。お待たせしてすみませんでした」 「いえ」 その青年の車椅子を押していたのは鈴成だった。 ターゲットとして「あの御方」の所に行ってしまった恋人を持つ者同士として、話をしたいと言われ晴臣と吾妻はその時間を少しだけとった。 「兄貴、それは?」 拓海は鈴成に静の写真を渡した。 「痩せたな。無理して笑ってる。でもまだ笑えるようで良かった」 鈴成は写真を愛おしそうに眺める。 「先程、どなたか出てくる人数を気にされてる方がいましたが、出てくるのは9名です」 「写真は10枚あったよな?」 「はい。1人は残るんです」 晴臣は静のことを思い、俯く。 「え? 全員出て来るんじゃ無いんですか?」 「1人の少年が残ります」 「その子の関係者は僕等になるので、我々からするとうちの子以外の全員が解放されるという感じです」 拓海はここにいる全員を見回して儚げに微笑む。

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