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第200話.◇2人の関係……?
「……晴臣と有馬さんっていつの間に?」
「一樹? 何言ってるんだ?」
呆然と呟かれた言葉に晴臣が返す。
「付き合ってるんだろ?」
じゃなきゃキスなんてしないだろ。
「え? 付き合ってない!」
「即答とか傷つくなぁ」
2人の世界の雰囲気がすぐに作られる。
吾妻は見たこともない表情をする晴臣を前に、雨音のことを思い出す。
「吾妻くんだって雨音さんと付き合ってるだろ? 他人のことに首突っ込まないでよ」
「俺と雨音さんのことは関係ないじゃないですか」
「そうかな? 晴臣と雨音さんは兄弟なんだから、多少は関係あると思うけどな」
晴臣が驚いている様子がないことに吾妻が驚く。
「晴臣、まさか知って?」
「ん? 雨音から聞いたから知ってるけど?」
「雨音さんは何て?」
「俺と付き合ってるから手を出すなって言われた。俺が一樹に手を出す訳がないのにな」
「そりゃ、違いない」
ハハッと2人で笑い合う。
「待て、なんで俺の話? 晴臣の話ししてたんだろうが」
いつの間にか自分の話にすり替えられていることに気が付き、吾妻は晴臣に詰め寄る。
「吾妻くん、晴臣に近づき過ぎだよ? ほら、離れて」
森が晴臣と吾妻の間に割って入る。
「あー、有馬さんが晴臣をってことね。で? 晴臣からは殴られたりした?」
「いや?」
「へー。今までは男に言い寄られた時って全部撃退してたよなぁ。それがされるがままとか、特別なんじゃないのか?」
吾妻は新しいオモチャを見つけたように楽しそうだ。
「そんなの分からないし、静さんが解放されるまではゆっくり考えられないよ」
「昔からそういう所は不器用だもんな。有馬さんって自分の思うままに行動する人みたいだから、流され続けないように気をつけろよ」
「ちょっと、ただでさえ警戒心が強いのに、更に強くしないで欲しいんだけど」
苦笑混じりに森が吾妻を見る。
「それを溶かすのが有馬さんの腕の見せ所でしょ? まあ、殴られてない時点で俺から見たらもう懐には入ってると思うけど」
「一樹、無責任な事言うなよ」
一連のやりとりを見て拓海はふふっと笑っていた。
「拓海さん?」
「晴臣さんと吾妻さんて仲良いですね。相手のことを思い合っていて、森さんや雨音さんからみると嫉妬する位に」
「本当にそうだよ」
「でも味方につけたら、とても心強くなると思いますよ」
拓海の言葉に晴臣が反応する。
「拓海さん! 森さんに変な知恵を付けさせないで下さい。ただでさえ物凄い勢いで向かってきてるので」
「少し強引なくらいが好きなのでは?」
拓海が晴臣にしか聞こえないように小声で言うと、晴臣は顔を真っ赤にする。
「な、な、な、何を言って」
「確かにこれは可愛いですね」
「だろ? ちょっとキスしただけでもふるふる震えちゃってさ。高校生でももっと進んでるよなぁ」
「強引なのが好きみたいですよ」
今度は森にしか聞こえないように小声でいうと、森はニヤリと笑った。
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