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第206話.◇危険人物?!

「後は出来たら音が鳴るから」 「すみません。手伝いもせず」 「手伝いも何も、コーヒー豆と水を入れてフィルターをセットするだけよ? 一人で十分だわ」 諒平さんは向かいに座るとニコッと笑う。 「で、晴くんと森のことだったわね」 「えぇ。僕が見ていた限りでは森さんと晴臣さんは両想いだと思ったんですけど」 「森は好きになった人に好きな人がいても自分の方に振り向かせようとするのよね」 好きな人が幸せならそれで良い。ではなく、好きな人は自分が幸せにする、ということなのだろう。 「ましてやあれだけ好みの子が目の前に現れて、口説かない訳が無いのよ。ただいつだって強引で、それが嫌で離れて行った子も多いの」 「見た目からは想像できないですよね。束縛する感じですか?」 「うーん。一度気に入った子を自分の部屋に監禁まがいのことをしたこともあるのよね。他の人の目に触れさせたくないって」 あれはやり過ぎだったと諒平さんが遠い目をする。 「そんな顔しないで。今は森もそこまでバカじゃないから。晴くんのことはかなり本気みたいだし。嫌われたくないって思ってるだろうから」 そんな話をしていたらインターホンが鳴った。 「ちょっと待ってて」 森さんがそこまで危険なことをしでかす人だとは思っていなかった。 焚きつけた本人としては、晴臣の無事を祈るばかりだ。 「明が?」 「そうなのよ」 「え?」 諒平さんと一緒に入って来たのは森さんだった。 「明、海外での仕事は平気なのか?」 「年明けまで現地での仕事はないよ。パソコンさえあればなんとでもなる」 「拓海と会えて良かったな」 「ああ、そうだな」 やっぱり同級生って仲がいいんだなぁ。 自分にはあまり同い年の仲良い人がいないので羨ましくなる。 「で? 俺の話してたんだって?」 「あ、焚きつけておいてアレですが、晴臣さんが相当悩んでいるようで」 自然と俯いてしまう。 「うん。知ってる。だから返事は保留にしたいって言われた。静と大野家の問題がクリアになったらゆっくり考えるって」 「待つんですか?」 「待つよ。静が解放されて、体調が戻るまでは日本にいたいけど、無理だと思う。海外に戻っても待つけど、距離のハンデは大きいよね」 そうか。森さんにとって待つ、というのはそれだけ覚悟がいるって事なんだ。 「できればずっと日本で研究を続けたいけど、そういう訳にもいかないしね。サファイアについての研究だからこっちにいられるだけだし」 「サファイアのかけらが手に入ったから日本に来られたってことですか?」 「そういうこと。後は使われた子達が出てきて、その子達を調べて今出来る限りの処置をして、どうなるか? ってとこかな」 サファイアなんて物、この世に無ければ良かったのに。 そう思うけど、無かったら森さんと晴臣さんが出会うことも無かった。 この先2人が付き合うようになるのなら、複雑だな。

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