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第229話.◇静からの手紙2①
「全員揃ったわね。今回集まってもらったのは、静ちゃんから預かっていたメッセージカードを渡すためなの。このメッセージカードはある波長の光をあてることで本当のメッセージが読めるように出来てるの」
まだ手にしたことのない面々がキョトンとするので、何も書かれていないメッセージカードを取り出す。
「例えば表向きのメッセージは『おめでとうございます』で、本当のメッセージは………読んでからのお楽しみね」
リビングの端にある間接照明の所に行くと、1人1人その光にかざす。
「これ、どういうシチュエーションだよ」
「ん? 本当だな」
森と明が呆れる。
「うわ、嫉妬だわ」
「………はい」
「おう、………」
潤一と浩孝は言葉が出ない。
「なんて書いてあったの?」
「え?」
口にするのは恥ずかしく、敦に見上げられた潤一は口ごもる。
「なんて言うかバーカ。………好き。だって」
ハルの情感たっぷりのセリフに敦は、これは潤一も浩孝も言えないだろうと思いつつ、それを想像してぷっと吹き出す。
「これで見方は分かったわね。それじゃあカードを渡すわ」
全員にメッセージカードを渡し終えるとみんなカードの中を見る。
そこには『ごめんなさい、さようなら』の文字がある。
例えそれが本当のメッセージでないにしても、静が自分からいなくなったということに間違いないことを突き付けられる。
「俺は最後に見るから」
期待と不安が入り混じったような顔をした鈴成に異論を唱える者は誰もいなかった。
だれも中身を見に行こうとしないなか、森が動いた。
「じゃあ俺が見ようかな」
森がメッセージカードを光にかざすと静の几帳面な字が現れる。
『お久しぶりです。いきなり変なお願いをしてすみませんでした。でも森さんのことなので、サファイアの研究は進んでいることと思います。全てを解明して下さい。そして世界中で苦しんでいる人達を救って下さい。僕のことは気にしなくていいから。 静』
「あの子は……本当に自分のことより他人のことを心配するんだな。元はと言えば静のために調べ始めたんだよ」
森は今の静の姿を知らないから家庭教師をしていた頃の姿を思い出す。
女の子に間違えられることも多くて言葉も上手く出なくて無表情だった。
拓海や鈴成と出会っていい方向に変わった静に会いたかったと思う。
静が帰って来た時に会うとなるとまた傷ついた状態で、もしかしたら昔よりも酷いかもしれない。
あの子ばかりが苦しい目に遭って、この世は理不尽だらけだと思う。
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