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第232話.◇静からの手紙2④

ハルが間接照明に近づく。 「静くん………」 メッセージを読む前からハルは涙を目に溜めていた。 『ハル先生、あの時また来週って言ったのにいなくなってごめんなさい。どうしても行かなくてはならない所が出来てしまいました。帰ることは出来ないかもしれません。僕のことは待たなくていいです。素敵な先生になって下さい。 静』 「え? そんなこと言わないで」 ポロポロと涙を流してその場にペタンと座り込む。 あんなに心が優しい子が行方不明になったと聞いて、誘拐を疑っていた。 でも、これを読む限りでは自分からその場所に行って、帰ってこられない状況になっているという事になる。 待たなくていい、どんな思いでこれを書いたのだろう。 待つなと言われたって待つよ、友達になっただろ その場から動けずにいたら、誠が間接照明に向かって来た。 「ごめん、どくね」 「そこにいて大丈夫です」 前回のメッセージは心配だって書いてあった。 僕は静が心配だよ………? 『誠、今まで待ってくれてありがとう。きっと待っている方が辛いよね。僕に何があったのかは拓海さんか明さんに聞いて。教えてくれるはずだから。絶対に帰るって書いたけど、帰れないかもしれない。だからもう待たないで。寮の僕の荷物も運び出していいよ。バイバイ 静』 本当に別れを告げられたようで、誠には悲しみしか残らない。 「……ふぇっ……ゔうっ……やっ、だぁっ……」 辛いのは僕? これを書いた静の間違いだよ 誠は声を上げて泣き始める。 泣くのを我慢していた面々もまるで小さな子供のように泣く誠を見て、ホロリと涙を零す。 静に何があったのか聞きたい気持ちと聞きたくない気持ちが交錯する。 きっと想像していたより苦しいことなんだろうと思うと、余計に涙が溢れてくる。 不意に誠は抱き締められる。 「ヒロ、くんっ」 「いいよ、泣いていい」 ポンポンと背中を叩かれて益々涙が溢れてくる。 それも少しするとおさまってくる。 「ぐすっ……ありがと、ヒロくん」 「いや? 無理に笑わなくていいよ」 涙を手で拭われて浩孝を見上げる。 笑わないと自分ではない。いつからか何故かそう思うようになっていた。 どうしていいか分からずに誠はギュッと浩孝の背中に腕を回した。 敦は泣いている誠を見て、まだメッセージカードを読んでいないのに涙を流していた。 「敦」 「じゅん、いち」 ギュッと抱き締め合って、涙も止まって落ち着いてから 敦も間接照明に向かった。 その時にはハルも誠と浩孝もそこからはいなくなっていた。

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