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第233話.◇静からの手紙2⑤
「静……」
メッセージカードを読んで目を丸くする。
『敦、今まで待ってくれてありがとう。僕は大野家にいる。詳しくは拓海さんか明さんに聞いて。全てを話すように書いたから。半年経って僕がいないことにも慣れたよね?必ず帰るって書いたけど帰れないかもしれないから、もう待たないで欲しい。長谷くん、誠、芹沼くんと仲良くね。バイバイ 静』
一度止まったはずの涙がまた流れ始める。
ずっと、大野家にいるんじゃないかと思っていた。
明さんでも助けられないのは何故?
今すぐにでも問いただしたいが、鈴成がまだメッセージカードを読んでいないので、グッと我慢する。
静がいないことに慣れるなんてことはない。
いつだって静を目で探してしまう毎日だ。
外に出かけても、静に似た背格好の人に何度も声をかけては落胆してきた。
ウサギのグッズもいつの間にか静のベッドの上いっぱいになっている。
「敦?」
「……っ………じゅんっ、いちぃ……」
敦は潤一に抱きついて胸に顔を埋める。
声を上げたくないのかぐぅっと我慢しているようだ。
「我慢すんな、ちゃんと泣いたらいい」
首を横に振って唇を噛む。
2人だけならキスでもするところだが、そういう訳にもいかず、潤一は敦の唇を指で辿る。
「だい、じょぶ、だから」
鈴成のために間接照明のそばから離れた。
どこか暗い色を落とした鈴成が間接照明に近づく。
別れを望まれるのではないか? そんな不安でいっぱいだ。
『鈴成さん、会いたいです。そんなことを言える環境にはいないかもしれないけど、きっとそう思ってるんじゃないかな。自分がどんな目に遭うのか大体の予想はついています。もうあなたの元に帰ることも出来ないかもしれません。でも、明さんも拓海さんも待つことを止めたとしても鈴成さんにだけは待っていて欲しい。わがままでごめんなさい。何があっても大好きです。 静』
別れをなんて全く考えていないことが分かってホッとする。
まさかこんなラブレターを貰うとは思ってもいなくて、みんなとは対照的に微笑んでしまう。
ただ、どんな目に遭うのか分かっていながら、帰れないかもしれないことも覚悟して足を向けたのかと思うと胸が締め付けられる。
誰に何を言われようと待つと決めたことが覆るなんてあり得ない。
耐え難い酷いことが静の身に起こったとしても、心にたくさんの傷を負っても、いつの日かまた心から笑える日がくるようにそばにいる。
だから変なことは考えないで欲しいと願う。
この前聞いた話では自分達の事を忘れ、目も見えなくなったということだった。
誰も待つ人はいないと思っていると………。
自暴自棄にならないかと不安になる。
不安は色々ある。それでも会いたい、そして静のことを考えるだけで愛しさが込み上げる。
俺だって何があっても大好きだよ
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