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第242話.◇再会③

「日依李さんっ……会いたかったです」 亜愛は日依李に抱き着く。 反射的に抱き締め返すと、ポンポンと背中を叩く。 「待っててくれてありがとね。まだちゃんと思い出せてないけど、この抱き心地は覚えてる」 腕にすっぽりと収まるくらい小さくて首元に顔を埋めると、良い匂いがする。 『日依李さん、大好き』 頭の中に声が響く。それと同時にカラーの映像も。 そこには満面の笑顔の可愛い女の子がいて、まるでお花が舞っているようだった。 日依李の頭に響いた声は目の前にいる子と同じもので、きっと映像の子がこの子なんだろう。 「亜愛、ずっと一緒にいよう」 「日依李さん、もちろんです」 日依李も思い出した訳ではないが、自然と名前を口にしていた。 「サク、見えてる私達は後でいいから、見えない子達からにしましょう」 「イズミ、いいのか?」 頷く和泉を見て咲弥は軽く頷くと冬の肩に手を置く。 「え? 僕? イズミさん、いいの? やっぱり女の子からの方がいいんじゃ……」 「いいのよ。見た目だけでいえばフユの方が女の子でしょ?」 「何言ってっ……」 冬もあと少しでターゲットとして連れて来られてから1年になる。 思い出すまで、目が見えるようになるまで1ヶ月を切っている。 「(しゅう)さんですね? フユはマスコットみたいな存在でした。俺もだいぶ癒されてた」 「サクさん。僕もたくさん助けてもらってありがとうございました」 「あぁ。フユ、お前の大切な人は車椅子だから、ぶつからないように気をつけて」 事故に遭ったと言っていたと言われた事を思い出す。 自分のせいで事故に遭って車椅子の生活に? そう思うと冬は足がすくんでしまう。 「冬、そんな顔しないで? 目が覚めたことが奇跡だって先生には言われたけど、冬に会いたいって思いが目を覚まさせたって思ってるんだ。だから、後藤さんから連絡をもらって凄く嬉しかったんだよ?」 「でもっ、僕は何も覚えてなくてっ」 タイヤが擦れるような音がする。 「触ってもいい? 知らない人だから怖いかな」 「大丈夫だと、思う」 手を両手で包むように握られる。 自分より大きくて温かいその手はとても安心する。 「怖くない?」 「平気」 優しい声も優しい行動も、嬉しくて胸がいっぱいになって泣きそうになる。 「やっぱり怖いかな」 手を離されそうになり、冬は慌ててその手を握る。 「冬?」 「怖くないよ? 嬉しくて………」 冬の目からポロポロと涙が零れる。 「ふふっ、相変わらず泣き虫だね」

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